武蔵野奄美フォーラム

三味線の手ほどきに出席者らも身を乗り出す


講師の藤井富廣さん

掛け合いの面白さも伝えて

藤井富廣さん講演 島唄の魅力紹介

【東京】第28回武蔵野奄美フォーラム(大江修造会長)が10月29日、小金井商工会館前原集会所で開催された。今回は徳之島の手々(徳之島町)出身、藤井富廣さんをゲストに迎え「島唄はなぜ人の心を惹きつけるのか」~島唄教室での私の体験~と題して講演が開かれた。台風余波を受けあいにくの天気だったが、来場者らは島唄の話に熱心に耳を傾けた。

武蔵野奄美フォーラムは、社会のいろいろな分野で活躍してきた、奄美にゆかりのある人たちの貴重な体験や仕事ぶりを聴くことで、自己啓発と親睦を深めることを目的として結成。年2回開催されている。

この日は、長年にわたり「東京奄美サンシン会」の会長として後進の指導に当たってきた藤井さんが講師になり、東京で島唄を教え続けてきて感じてきたことを語った。「最近は奄美出身者でなくても、島唄に興味をもって入ってくる人が多くなった。意外と島出身者は、弾けない、歌えないとすぐにあきらめてしまう人も多いが、初めて島唄に触れる都会の人は熱心に取り組み、島言葉なども素直に受け入れるので上達が早い。

今は譜面があり、口承伝承だった島唄も譜面から入るようになってきた。譜面から入るといつまでたっても、譜面を手放せないようになってしまうのが課題になる。その点、島唄に幼い頃から慣れ親しんできた島出身者らは、2、3曲マスターすると、そのあとは自分なりに進むことができていて、これは島のDNAではないかと感じる」と藤井さん。

島唄の魅力については「島唄を知ることで歴史を知ることもでき、言葉にしてしまうと角の立つことも、歌の歌詞としてさらっと出してしまっている面白さがある」。「最近島に帰ることがあったが、名瀬は変わりすぎていた。これでは、奄美に行っても島唄のバックボーンを感じにくいということが分かった。もっと歴史背景を伝えていこうと思う。島口を知らなくても、アイデンティティーを伝えていくことはできる」と熱く語った。

また「島尾ミホさんが書かれた『海辺の生と死』には、昔の奄美の景色が描かれており、昔ながらの暮らしぶりを知る手掛かりになる」と、紹介した。

二部ではディスカッションになり、「いきょうれ節」が歌の歌詞の「いきょい」、「うりよ」、からいきょうれ節となった流れや、アジアの少数民族の中に残る歌と島唄との共通性などについて話が広がった。島唄ならでの掛け合いの面白さもぜひ伝えていってほしいとの声も上がった。

実際に会で使用されている譜面を使って「いきゅんな加那」の指導などもあった。