単価設定に見る本気度

ポンカン、タンカンの買上げ単価

思い封印し全量廃棄、早期根絶へ

奄美大島で再侵入したミカンコミバエの問題で県は先月27日、植物防疫法に基づく緊急防除に伴い、国の廃棄命令を受けて移動規制する果実のうち、ポンカンとタンカンの1㌔あたりの買い上げ単価を決定した。販売用と自家消費用に区分し、販売用はJAの共販や公設市場、個別販売のといった過去の実勢価格を考慮した額に設定したことが大きな特徴といえる。

標準価格は奄美公設市場、上限価格はJAあまみで秀品として取引された5年間のうち、最高と最低を除いた3カ年分の取り扱い価格の平均値を参考にした。ポンカンの上限価格は取引量が少ないため、標準価格に2・43倍を乗じた額とした。

販売用は50円刻みで、ポンカンは8段階、タンカンも11段階の幅を設けており、実勢価格により近づけるような工夫がうかがえる。また、規格外品など商品価値の低い果実も廃棄に協力してもらえるよう、「その他」で一律40円としている。

奄美市名瀬朝戸の選果場で通常選別される果実のうち、約15%が規格外品となることから、今回廃棄対象となる果実の15%は、「その他」の40円で計算。残る85%は販売実績に応じて買い取る。

県が示した買い上げ単価は、地元の生産者代表やJA関係者、島内5市町村の担当者などで組織する評価会で意見を取りまとめて決めた。庭先などで栽培する自家消費用についても、廃棄への協力を呼びかけるため、ポンカン90円、タンカン110円で買い上げる方針を示しており、ミカンコミバエの早期根絶やまん延防止を目指す、国・県の本気度が見て取れる。

県大島支庁農政普及課によると、廃棄時に市町村が計量して、県が買い取る仕組み。生産者は市町村へ販売実績を証明する書類などを提出し、各農家の生産補償額を算出する流れ。近日中に市町村向けの説明会を実施し、その後市町村から生産者に説明する予定という。

今回県が決定した買い上げ単価について、奄美柑橘クラブの木村忠義会長(41)は、「個別販売なども考慮され、金額は妥当と思う」とした上で、「販売実績の書類処理など業務量が増える、市町村がどこまで対応できるだろうか。生産者まで情報が届いておらず、対応ができない。早く相談窓口を設置してほしい」と訴える。

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今回の価格決定を前に開かれた生産者への説明会では、参加者から一律価格を求める声も上がっていたが、段階的な価格設定は当然と言える。奄美の果樹生産に詳しいある専門家が「奄美大島は選果場がありながら利用率が低く、JAの共販取り扱い実績が低い」と指摘していたように、生産者によって栽培管理や品質、生産への意欲に大きな格差があり、販売方法などにも差があるからだ。

仮に低い次元で一律単価を設定すれば、高い意識で手間暇をかけ、高品質な果実を栽培している農家の離農は避けられない。努力した生産者は報われるべきだ。そして打撃を受けながら、補償ではなく支援のみの措置となる流通・加工・販売関係者の思いもくんでほしい。

買い上げ単価について様々な思いがあるだろうが、問題を早期解決したいという気持ちは同じ方向を向いているはず。単価への思いは一時封印して、混乱なく全量買い上げに協力することで一刻も早い根絶につなげ、再び安心して生産・出荷できる体制を取り戻すことが先決ではないだろうか。
(且 慎也)