研究成果を発表した鹿大COCセンターの報告会
2014年度に始まった鹿児島大学COC事業「火山と島嶼を有する鹿児島の地域再生プログラム」に関する教育研究成果報告会が13日、与論町中央公民館であった。同大学の教授らが水産や畜産、医療など各分野での研究成果を発表。同島の課題解決や地域活性化に向けた商品開発などの方策をアドバイスした。
同プログラムは文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」の一環。同町は県内の課題を持つモデル地域の一つに選定されており、同事業では▽地域課題の解決▽教育カリキュラムを構築した人材養成▽生涯学習の場を充実し、養成した人材による持続的な地域再生・活性化―を目指すとしている。
報告会では各分野の7人が成果を発表した。医歯学総合研究科の大脇哲洋教授は、医学部、保健学科、歯学部の1年生による多職種の現地実習・調査を報告。急性期医療の提供が主な役割の大学病院では、一般的な症例を診療する機会が少なく、「現場の一線で診療実態を見ることは学生にとってとても重要」と強調。
また地方では言語や生活環境、文化などの違いがあることから、「学生にとって、地域の人全てが先生。学生の地域性志向が醸成されれば、医師確保にもつながる。医療者育成に向け、学び環境を一緒に構築しよう」と呼びかけた。
水産学部の塩﨑一弘准教授は、同町で栽培されている柑橘類の可能性について発表。与論産ミカンにはがん細胞の増殖を抑制する働きがあるほか、漁業養殖におけるバクテリア感染を抑える結果の報告例があり、「養殖魚の飼料添加物として活用できる可能性もあるのでは」と述べた。
共同獣医学部の宮本篤教授は、調査した同島の飲料水について、「ミネラル成分が多い一方で、塩素や硫酸値も高い。海水の流入やし尿を含む下水排水の混入が考えられる」と指摘。同島の農業生産額の約半数を支える畜産では、し尿による汚染も危ぐされている持論を展開し、「今後も厳格な管理をすることが、豊かな与論町づくりにつながる」とエールを送った。
水産学部教授で同大学かごしまCOCセンターの木村郁夫センター長は、「与論島水産物の高付加価値流通のための教育研究」をテーマに報告した。奄美近海で捕獲される魚種について、研究結果を基に導き出した、鮮度コントロール方法を紹介。処理管理ができる水産物については無償で商標使用を許可し、水産業活性化に貢献する考えも示した。