利用登録増加、定着重視へ

奄美の障がい者就労支援
精神高い割合、開示で職場理解

 2015年度の県内ハローワーク(職安)を通じた障がい者の就職件数は7年連続で最多を更新したが、名瀬職安(里村秀一郎所長)管内も過去最多となっている。就職件数は伸びている一方で短期間での離職も少なくないことから、職安と連携し福祉的側面から就労支援に取り組んでいる機関は職場の理解促進や、前段階となる実習の働きかけなどを通し定着支援に力を入れている。

 鹿児島労働局によると、15年度の障がい者の新規求職申し込み件数は9・5%増の3296件。就職率は53・7%と前年度を2・4ポイント下回ったものの、高水準を維持、全国平均(48・2%)を上回っている。

 県全体の就職件数は前年度比4・7%増の1769件となったが、このうち名瀬管内の場合同8・2%増の66件。名瀬管内の件数を障がい別にみると、精神60・0%増の32件、身体42・9%減の16件、知的125・0%増の18件など。産業別では卸売・小売業が最多の16件で、次いで医療・福祉10件、宿泊・飲食サービス業7件、サービス業同などと続く。

 職安と連携しながら、就労による自立を希望する障がい者の悩みなどに寄り添い、サポートしているのが障害者就業・生活支援センター。奄美群島全域を対象にしているのが、あまみ障害者就業・生活支援センター(向井扶美所長)で、15年度の実績をみると、利用登録状況(16年3月31日現在)は348人(男性230人、女性118人)となり、前年度を36人上回った。

 就労を目指しセンターを利用する障がい者が増えているが、支援実施状況をみると、職場実習あっせん26件(前年度比10件減)、就職(清掃や調理補助、電話対応など)31件(同1件減)といずれも減少した。早期の離職を防ぎ定着につながるよう就労希望者と受け入れる事業所側のマッチングを重視したためで、16年度も安定して就労し続けることが出来るように定着支援を重視していく。

 そのために促進していくのが実習。企業側に1~2週間程度の実習受け入れを働きかけるもので、大きく分けて二つある。一つは、通常の実習だ。もう一つは、県の事業の「企業による障害者雇用体験事業」で、実施にあたっては障がい者雇用経験のない事業主に奨励金、障がい者に手当を支払うものがある。センターの木場博幸主任就業支援員は「実習は今年度に入り、6件実施している。実習によりトレーニングすることでスキルアップにつながっているほか、受け入れる事業所側も理解を深める機会になり、働きやすい雇用環境の改善にもつながる。実習を受け入れた事業主の中には、実習後も引き続き雇用していきたいと申し出るところもある」と語る。

 センターの登録・支援実施で、全体に占める割合が高いのが精神障がい者。利用登録では47・7%、支援実施(実習あっせん・就職)で64・9%を占める。定着支援では精神障がい者への対応が鍵を握るが、就労にあたって本人が障がいについて開示するか、非開示にするかで差が出る(非開示の場合、短期での離職につながる傾向に)という。

 開示した場合、センターでは医療や福祉の関係機関とも連携しながらの支援や、事業主・職場に対し合理的配慮(改正障害者雇用促進法で提供義務)を求めることも可能だ。

 また、精神障がいは中途障がいのため特性が一人一人異なるとされる中、実習により就労面の特性(優れている部分等)を事業所側にアピールすることも出来る。障がいについて開示・非開示は本人の意思を尊重しなければならないだけに、センターでは開示した場合のメリットを伝え、事業主や職場全体の理解・配慮のもと長く働き続けることが出来ることを説明していく方針だ。