夏本番告げ 命の営み始まる

徳之島町金見海岸(真崎浜)で始まったオカヤドカリたちの〝産卵〟行動=18日午後10時すぎ

ムラサキオカヤドカリ
宿貝は豪華な夜光貝(ムラサキオカヤドカリ)

国天然記念物オカヤドカリ
徳之島町金見海岸で

 【徳之島】徳之島町北東部に位置する金見=かなみ=海岸の通称「真崎=まさき=浜」。一昨年相次いだ台風の高波の影響で本来の美しい砂浜の景観が一変したが、種保存の自然界の悠久のリズムにしたがって「ザワザワ、カチカチ…」。国指定天然記念物オカヤドカリたちの一斉〝産卵〟の命の営みが今年も始まっている。

 オカヤドカリの大群が、「金見崎灯台」下に広がる真崎浜の白砂や岩を覆い尽くすピーク時の光景は圧巻だ。例年梅雨明け前後の夜に始まり大潮の満潮時がピーク。亜熱帯の島々に夏本番を告げる夜の風物詩の一つだ。世界自然遺産登録に向けては「海浜の大自然に親しむ宝の一つ」にも挙げられている。

 梅雨明け宣言と大潮入りが重なった18日の夜、知人らをガイドしていた地元の元公務員男性(62)は「今年は14日ごろから見られ始めた。今後、午後9時~10時ごろの満潮時間帯がピークになるとみられる」。観察する際は「毎年観察ができるよう刺激を与えず大切に見守り、神秘的な自然界の営みなど海の希少生物の生態を学んでほしい」。

 経験則から、大潮の夜間の満潮時間帯に、蒸し暑い無風状態の気象条件が重なると最大のピークに遭遇できる。

 ヤドカリの大群は、殻(宿貝)と体の間に抱えたままふ化させたゾエア幼生を、礁池の海水に浸かってポンピングしながら放出する。その瞬間、赤紫色のボウフラ状の幼生の群れが、体をくねらせながら泳ぐ姿が肉眼でも確認できる。