徳之島で交通事故に遭い、平川動物公園で継続治療中のクロウサギの現況報告も=1日夜、徳之島町母間
【徳之島】環境省徳之島自然保護官事務所主催の出張セミナーが1日夜、徳之島町池間公民館であり、鹿児島市平川動物公園の飼育展示課主任の落合晋作さん(36)が「動物園ってどんなところ?~平川動物公園の取り組みとボマちゃんのいま~」で講演。昨年12月、同町母間の農道で交通事故に遭い瀕死の重傷で保護され、現在同動物公園で継続治療飼育中のアマミノクロウサギの幼獣「ボマちゃん」(愛称)の現状報告もあった。
同個体は昨年12月13日夜、農道にうずくまった状態で発見された。当時の体重は約800㌘。幸い発見が早く地元獣医師の処置で一命を取りとめた。しかし下あごの骨折など事故の後遺症で視力の低下や神経障害が見られたため、奄美大島の獣医師に移送して治療を継続。今年2月5日には平川動物公園に再移送、治療飼育を継続中。
同動物公園は過去にクロウサギを飼育し、動物園として初めて飼育下繁殖に成功した実績も。奄美大島と徳之島にしか生息しない国指定特別天然記念物アマミノクロウサギの保護協力体制も整えているという。
セミナーには町内外から家族連れなど約60人が参加した。落合さんは動物園の複合的機能として①レクリエーション②教育の場③種の保存(自然保護)④調査・研究(病気やけがの治療法、人工繁殖など)の場―など役割なども交え、子どもたちにも分りやすい楽しい語り口で解説した。そして生まれ島から北に約470㌔離れた同公園で治療飼育中のクロウサギについて「ボマちゃんは元気にしています」と、写真や飼育記録も交え近況を報告した。
体重は順調に増え続け現在約1973㌘で、「クロウサギの体重変化は世界初の調査」。半面、あご骨折の後遺症で口の中は依然として思わしくない。伸び続ける歯を放置すると骨を突き破るため月1回歯を削るトリミング処置が必要で、「治療法を全国の獣医師と検討している」とも。
「ボマの今後」については、世界自然登録への普及啓発も図りながら「将来的には島に帰ってもらいたい。そのためには、治療を継続して受け入れのできる施設が必要」とも話した。