沖永良部シンポ

沖永良部シンポジウムで方言ラジオ体操を披露した地元の小学生たち=知名町=

孫が大人になっても美しい島に 基調講演やパネルディスカッション
共同体や自然「人とつなぎ直す暮らしを」

【沖永良部】第2回「未来の暮らし方を育む泉の創造」プロジェクト合同開催、第7回沖永良部シンポジウム「孫が大人になったときにも光輝く美しい島つくり」が3、4日の両日、知名町のあしびの郷・ちなであった。有識者による基調講演やパネルディスカッション、テーマ別の分科会などで沖永良部島の未来について考えた。

シンポジウムは、酔庵塾、同シンポジウム実行委員会、東北大学大学院環境科学研究科「未来の暮らし方を育む泉の創造」が主催。持続可能な島を作ろうと2009年から毎年行っている。

1日目の基調講演で、鈴廣かまぼこグループ(神奈川県小田原市)の鈴木悌介代表取締役副社長は、同市の地元企業が協力して行う地産地消電力の販売や、井戸水を活用した省エネルギーの取り組みなどを紹介し「エネルギーの大部分は電力ではなく熱として使われている。そのことに注目してエネルギー全体のことを議論して欲しい」と述べた。

環境省大臣官房会計課長の鳥居敏男氏は、森里川海プロジェクトの目標や具体的アイデアを説明。台風12号の影響で来島できず沖縄からインターネット中継で参加した(株)アンカーリングジャパン代表取締役の中村圭一郎氏は、観光地域づくりを「地域の暮らしを豊かにするための有効な方法である」と述べ「島づくりのために観光交流をどのように活用できるかを考えて欲しい」と呼び掛けた。

パネルディスカッションでは、場所文化フォーラムの吉澤保幸代表幹事をファシリテーターに、東北大学大学院環境科学研究科の古川柳蔵准教授、一般社団法人リバースプロジェクトの村松一代表理事、島内から菅村商店オーナー役員の菅村和子氏(和泊町)と美容室「PEACE CUTS」代表の竿智之氏(知名町)がパネリストを務め、「インバウンドの観光は確実に外貨を獲得できる。20年後、島の子どもたちが外国人とコミュニケーションを取っている姿を思い描いて欲しい」「クリエイターが関わることで島の価値の深堀と発信ができるのでは」「削減だけではダメ。削減したからこそ豊かに思えることは何かを見つける必要がある」などと提言した。

このほか、落語家の桂三四郎氏による「90歳ヒアリング落語~沖永良部島」や、沖永良部高校の生徒が考えたビジネスの提案、2017年4月開校予定のサテライトカレッジについての説明が行われた。

2日目は、島外からの参加者や地元の児童生徒を含む地域住民が参加し、五つのテーマ(集い・楽しみ、食、自然、仕事、こども未来部会)に分かれて島の未来を話し合った。参加者は「沖高に農業科が欲しい」「障がい者の人もシンポジウムに参加してもらい、どんな人にも役割があることを示す」「島でゆっくりと過ごすことで、新たなビジネスが見えて来るのでは」などの意見が出た。

また、島内の小学生約30人が集まった子ども未来部会は「夏休みのある一日」と題した劇を披露し、方言ラジオ体操や残しておきたい島の魅力を方言カルタで発表した。
 合同会社地球村研究室代表の石田秀輝氏は「共同体や自然を人とつなぎ直すような暮らし方を、もう一度この島でやらないといけない。自足は我慢することではなく、豊かであることの新しい切り口になる」と講評した。