奄美産果樹 PR用チラシ作成

台風被害などがなかった関係で順調に生育している今期のタンカン。島外に出荷できなかった影響を解消していくためにも、島外での販促活動が課題となっている

規制解除受けて群島農政協
データ各市町村にも提供へ

果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエ侵入に伴う奄美大島の島外移動規制は今年7月14日に緊急防除が解除されたものの、こうした情報が島外の消費者などには十分に伝わっていない。奄美群島農政推進協議会(事務局・県大島支庁農政普及課)ではタンカンなど奄美産果樹をPRするチラシを作成中で、島外での販売促進活動などに活用、これまで通り出荷できることを周知し流通拡大を目指す。

奄美大島では昨年6月末に奄美市でミカンコミバエ1匹が誘殺され、9月下旬から瀬戸内町の加計呂麻島などで急増。これを受けて11月上旬には農林水産省が防除対策検討会議を開き、植物防疫法に基づく緊急防除として、奄美大島全域(加計呂麻・請・与路島を含む)を対象に、果実・果菜類の島外出荷を禁止する移動規制の実施を決定。昨年12月13日から実施されたが、航空防除や地元自治体、住民による自主的な寄主植物の除去作業などの対策が進められた。

それにより解除の条件となる3世代相当期間トラップによる誘殺がないことが確認され、当初の期限(2017年3月末)より期間が短縮されて緊急防除の省令は廃止となった。奄美大島の果樹農業の柱はタンカン。規制解除で島外への出荷が可能になった中、来年2月の収穫を前に今月に入り島外の消費者からの注文を受け付けている果樹農家もいる。

しかし島外出荷ができない空白期間が生じたことで、農家の中にはこれまで通り島外出荷できるか懸念する声もある。JA大島事業本部果樹部会の岡山俊一会長は「規制解除により、年内で収穫期に入るポンカンや津之輝=つのかがやき=といった果樹も島外に出荷できるが、行政やJAなどの関係機関はあらゆる機会を捉えて規制解除を島外にPRしてほしい。島外からの宅配注文などにも対応している農家の中には、発送できなかったおわびの文書を送付すると同時に規制の解除を伝えているが、これによって知ったという消費者もいる。空白を解消するためにも島外PRの強化をお願いしたい」と語る。

規制解除を受けて島外での販売促進対策は関係機関も動き出している。大島支庁農政普及課によると、作成に取り組んでいるPR用チラシはタンカン、スモモ、マンゴーなど奄美産の熱帯果樹を広くPRする内容になる。奄美群島の位置や気候などの情報も盛り込み、農家が丹精込めて生産した「自慢の逸品」であることを強調する。同課の宝正己課長は「魅力的なデザインやキャッチコピーを打ち出すとともに、果樹の写真や栽培風景、収穫時期なども示し島外の消費者、奄美を訪れる観光客の目を引くチラシを作成していきたい」と説明。地元業者によるデザインコンペ後にチラシを1500枚作成、12月中旬までの納品を計画している。

群島農政協作成のPR用チラシはデータ(CD-ROM)を管内市町村などにも提供。それにより必要な枚数を印刷してもらい、独自の販促活動に役立ててもらう。チラシの活用は行政やJAの関係機関だけでなく、宿泊施設やレンタカー会社などの観光業者、空港・港の管理者、商工会など経済団体にも要請。それにより奄美産果樹を広くPR、これまで通り島外流通が可能になった中で購入や取引を働きかけてもらう方針だ。

このほかJAと関係行政機関が一体となって今月下旬には東京などの大消費地でタンカン販促活動を実施。さらに1月22日には3年に一回開かれている「奄美群島かんきつ振興大会」(群島農政協主催)を宇検村で開催。果樹産地として生産農家の意欲を高めていく。2月上旬に予定している群島タンカン品評会では出品物を買上げ、奄美空港で観光客などに無料配布すると同時に、PRチラシや注文票も配っていく。