〝奄美遺産〟継承、活用を

奄美の自然や歴史文化について研究成果を発表した公開セミナー

加計呂麻島で公開セミナー
「ボトムアップ型の遺産に」
鹿大島嶼研と同志社女子大

 鹿児島大学国際島嶼研究センター奄美分室と同志社女子大学グローカリズム研究会は15日、瀬戸内町の加計呂麻島展示・体験交流館で公開セミナーを開いた。5人の研究者が奄美の自然や歴史文化について研究成果を発表。故・中山清美氏が提唱した“奄美遺産”について、「どうやって継承していくかが課題」と提言した。

 セミナーのテーマは「地域共有資源としての奄美の景観~自然文化が織りなす景観の価値~」。同センターからは3氏、2008年から7年間、奄美大島と加計呂麻島の調査をしてきた同大学の大西秀之教授、東京文化財研究所無形文化遺産部音声映像記録研究室の石村智室長が発表した。

 大西教授と石村室長は、奄美の人々が古里の価値を自ら見出し、活用していく「奄美遺産」に取り組んだ故・中山氏の功績を評価。「持続可能な形で継承していくことが課題。時には外部の意見も取り込みながら、ボトムアップ型の遺産として活用していくことが重要」と見解を示した。

 同センターの藤井琢磨特任助教は、加計呂麻島特有の内湾性サンゴ群集について紹介。「内湾環境は人以外の影響を受けやすいぜい弱環境の一つ。生態系や種、種内の多様性など、豊かな自然があり、今何がいるのか残していくことが重要」と述べた。

 鈴木真理子プロジェクト研究員は「野生動物の観光利用を考える―動物への影響評価」について解説。観光客の増加による希少野生動物の行動や生理反応、繁殖への影響による個体数減少などの負の影響を懸念し、今後様々な観点から研究を進め、観光利用に向けたルールづくりの提案に意欲を示した。

 高宮広土教授は奄美・沖縄諸島の先史時代について説明。島嶼部は渡海や食料、人口維持などを背景に、世界のほとんどの島では1万年前以降に植民が進んだ一方、奄美・沖縄諸島ではそれ以前から人が居住していた事例などを解説。更新世に人が居住、狩猟採集から農耕への変遷など5項目は「奄美・沖縄だけかもしれず、奇跡の島々。四大文明に並ぶ島嶼文明と呼んでもいいのでは」と持論を展開した。