新しい環境文化型に意義

奄美群島国立公園指定記念式典で講演した志學館大学の原口教授

国立公園記念式典
原口教授講演 世界自然遺産へ「正念場」

志學館大学の原口泉教授は14日、奄美市名瀬のホテルであった「奄美群島国立公園指定記念式典」で講演「奄美群島国立公園誕生の歴史と意義」を行った。奄美群島が従来の生態系管理型の国立公園ではなく、新しい環境文化型の国立公園として誕生した経緯や意義などを解説し、国立公園指定を喜びながら今年が世界自然遺産の実現に向けて正念場であることを訴えた。

原口教授は、奄美群島が国内で34番目の国立公園に指定されたことを評価。また、今までの生態系管理型の国立公園でなく、新しく環境文化型の国立公園になったことが歴史的意義だと位置付けた。

世界文化遺産になった「明治日本の産業革命遺産」や世界自然遺産の屋久島に触れながら、世界における国立公園や日本の国立公園の歴史を解説。昭和9年に国立公園になった阿寒は、鹿児島出身の前田正名の子孫が保護していたためと紹介した。

環境文化型ということで、奄美の人たちシマンチュの文化遺産(島唄・大島紬など)も含まれていると解釈。原口教授は国立公園指定で、「奄美の魅力とPRポイントがあるのを認識しなければならない」と指摘した。

アマミノクロウサギを例に挙げ、クロウサギを最初に紹介したのは幕末に奄美に遠島となっていた名越左源太によると教示。著作『南島雑話』の中で、クロウサギが図とともに「大島兎」として記載されていることが述べられた。

奄美の自然や文化などの価値が見直されて、国立公園になったのは今までの研究者の功績もあるとした。原口教授は「昨年、死去した郷土史家の弓削政己さんや考古学者の中山清美さん、今年亡くなった島唄の築地俊造さんなどの冥福を祈らなければならない」と参加者に呼び掛けた。

講演の後半に「自然との共生社会の実現」を世界各国共通の課題とし、奄美が世界自然遺産を実現し「奄美が世界のモデルにならなければならない」と力説。今年の夏にも行われるIUCNの調査について、「我々のふるまい、志が問われる」と述べ、世界自然遺産に向けて「今年が正念場、スタートの年である」と訴えた。