喜界島大雨

崩土により通行止めとなった道路(喜界町浦原、5日午前撮影)

0905喜界島大雨 住民「起こると思っていなかった」② (1)
のり面の土砂崩れも多く発生した(喜界町嘉鈍、5日午前撮影)

住家被害は98棟、農業影響も

 

少しの雨でも「土砂災害起こる可能性」

 

 奄美地方北部は4日、「50年に1度」の大雨に見舞われ、喜界島では多い所で1時間に120㍉(レーダー解析値)の降雨を観測した。人的被害はなかったものの住家、農業への被害、道路の通行止めなどが発生。一夜明けた5日、徐々に爪痕が明るみになった。

 名瀬測候所によると同日、奄美地方北部が太平洋高気圧の縁辺部にあたり、フィリピン付近にある熱帯低気圧などに由来する湿った空気が流れ込み、奄美大島と喜界島が発達した積乱雲に覆われたという。喜界島の観測地点では4日午後10時までの24時間降水量が455・5㍉と、観測史上1位となる記録的な大雨を観測。同測候所担当者は「土壌中に水分が多く含まれている状態であるため、少しの雨でも土砂災害が起こる可能性がある。ガケなどには近づかないように」と注意を呼び掛けている。

 同観測地点の1時間当たり降水量の推移をみると、雨は3日午前から降り始め、同日午後8時までの1時間には30㍉の激しい雨が降った。そこから雨脚は一度落ち着いたが、4日正午からは再び1時間あたり30㍉を超す降水量を観測。ピークとなった同4時26分までの1時間には110・5㍉の猛烈な雨が降った。

 喜界町は4日午後2時55分、一部地域(1604世帯3086人)に避難準備情報を発令。最大で約10人が自主避難する事態となった。雨により、同町で床上浸水18棟、床下浸水80棟の住家被害が発生。また県道628号浦原喜界空港線(浦原)、県道619号喜界島循環線(伊砂)が崩土により通行止めとなった。このほかにも町道や農道での通行止め区間が発生している。

 同町在住の男性(56)は「山の少ない喜界島で雨の災害が起こると思っていなかったので驚いた。8月に接近した台風5号で崩落した所と同じ場所が被害にあっており、2010年の豪雨災害より酷かった気がする」と話した。

 農業面への被害も多く、同町農業振興課担当者は「のり面崩壊や土砂崩れなどが多数発生し、農道や畑へ流入した。特に収穫後に天日干ししていたゴマに大きな影響が出ている」と不安を語った。

 同町役場は復旧に向け、詳細な被害状況についての調査を行っている。