奄美・沖縄相互交流拡大へ〝キックオフ〟

奄美群島各自治体の代表者と手を取り、交流連携を約束した翁長沖縄県知事(写真中央)

対馬丸きっかけ 翁長知事が初来島

 

世界自然遺産登録前に連携

 

 奄美群島との交流機運を高めようと沖縄県は25日、奄美市内のホテルで2017年度「奄美・沖縄交流拡大事業キックオフ(開始)イベント」を開いた。集まった鹿児島県、群島12市町村の首長や行政関係者を前に就任後、奄美大島初来島となった翁長雄志沖縄県知事は「これまでの交流実績を踏まえながら、両地域の将来への継承と、『ゆいまーる(沖縄の言葉で結いの精神)』でさらなる交流促進、地域発展に努めたい」と述べ、来夏を目指す世界自然遺産登録を前に、地域振興に向けた連携を呼びかけた。

 沖縄県によると、今回の事業は、戦時中米潜水艦に撃沈され、多くの犠牲者が出た対馬丸事件がきっかけ。73年前、遺体が流れ着いた宇検村の船越海岸に今年3月、慰霊碑が建立されたことを受け、奄美との相互交流の重要性を再認識。18年度以降、同県が進める各種事業への足がかりと位置づけた。 

 来年の世界自然遺産登録を見据え、学校教育につなげる「次世代継承交流事業」、歴史を学ぶ「対馬丸平和学習交流事業」、航路航空路の運賃低減化「連携交流促進事業」を新規で計画。観光分野でも共同展開を図っていく方針を明らかにした。

 この日は、沖縄県から行政、関係機関の約40人。また奄美は、国や県、各自治体、観光団体など関係者約120人が参加した。

 喜界島にルーツを持つという翁長知事は「奄美とは自然や風土、長い歴史に培われてきた文化など、様々な面でつながりは深い。引き続き多方面で交流を持ちたい」と意欲。また対馬丸事件を通じ、平和交流を快諾した元田信有宇検村長に対し「(慰霊碑建立は)奄美との交流を深める思いにつながった」と感謝した。

 奄美群島広域事務組合管理者の朝山毅市長は「沖縄とは戦後、一時交流が断絶したが、地域のつながりは途切れることなく続いてきた。交流事業が両地域のさらなる飛躍の後押しになることを願う」と語った。

 26日、翁長県知事は同村の対馬丸慰霊碑を訪れるほか、奄美野生生物保護センター(大和村)などを視察する予定。