新種のチンアナゴ発見

新種記載されたニゲミズチンアナゴの頭部拡大写真と全体写真(小枝圭太さん提供写真)


海底の巣穴から体を出して頭をもたげる様子(藤井琢磨さん提供写真)

鹿大島嶼研・藤井特任助教が共同報告
大島海峡「環境が豊かで多様性高い」

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室(以下、島嶼研)の海洋生物分類学を研究分野とする藤井琢磨特任助教(31)は9日、奄美大島沿岸で発見されたチンアナゴの仲間が共同研究で新種と判明し、和名「ニゲミズチンアナゴ」と名付けたことなどを学会誌に掲載したと発表した。藤井さんは奄美大島からの新種は2012年のアマミホシゾラフグに続くものとし、さらなる研究活動で今後も発見が期待されるとしている。

 島嶼研の藤井さんは、共同研究者の台湾国立海洋生物博物館・小枝圭太研究員と鹿児島大学総合研究博物館・本村浩之教授らとの調査で2016年11月、大島海峡の内湾砂泥底から新種のチンアナゴ属の魚類を発見し1個体の標本資料採集に成功した。

 この標本を基に新種記載論文にまとめ、18年5月8日発行の国際的学術誌『Zootaxa』にて新種のチンアナゴ属魚類「ニゲミズチンナナゴ(和名)、学名heteroconger fugax Koeda,Fujii&Motomura,2018」と名付けたことなどを発表した。

 チンアナゴ属は、温暖な海域を中心に世界中の砂泥底に生息する細長い身体の魚類。世界で17種が知られていて、砂底から身体を出して頭をもたげユラユラとプランクトンなどを待つチンアナゴの姿はダイバーや水族館の人気者になっているという。

 今回新種記載となったニゲミズチンアナゴは、体中に散らばった薄茶色の水玉模様と、えらぶたの上に一対の大きな白色の斑紋を持つことが大きな特徴。延べ20回におよぶ生態観察から性質は非常に神経質でシャイで、普段は海底の巣穴の奥に引きこもっているとした。
 海底から頭をもたげる姿を観察できたのは2回のみ。藤井さんは「遠くにユラユラ揺れている姿は視認できたが、近づくと蜃気楼=しんきろう=の一種である逃げ水のように姿を消してしまうため、標準和名をニゲミズチンアナゴと名付けた」と説明した。

 新種の標本が得られているのは大島海峡内湾の1個体のみだが、ダイバーや研究者が世界各地で撮り集めたチンアナゴの仲間の生態写真の調査から沖縄県宮古島諸島、フィリピン、インドネシアなどアジア太平洋に分布する可能性があるという。藤井さんは、「今回の発見は、12年に新種記載されたアマミホシゾラフグに続く奄美大島からの魚類のシンボリックな発見。大島海峡が内湾域から外洋域まで環境が豊富なため、多様性が高いことを示すものだろう。今後もさらなる研究で奄美の海から、面白い生き物がまだまだ発見されることが期待される」と語った。