臓器提供、県大島病院から移送

臓器提供、県大島病院から移送

摘出された臓器を移送する医療機関関係者(15日午前9時40分ごろ、県立大島病院内)

未成年では県内初
10代男性の脳死判定で

東京の(公社)日本臓器移植ネットワーク(=移植ネット)は14日、奄美市名瀬の県立大島病院で、重症頭部外傷により入院中の10代(18歳以上)男性が臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表した。家族が臓器提供を承諾したことを受け、15日、同病院から各地の待機患者への移植に向けて臓器が移送された。全国で553例目。県内でこれまで公表された脳死判定は6例あり、未成年患者のケースは初めてという。

移植ネットによると同病院からの連絡後、脳死判定を第1回(9日午前11時15分)、第2回(13日午後7時49分)の2回実施。家族の同意を得て、提供臓器は心臓、肺、肝臓、腎臓、膵=すい=臓、小腸と決定した。

摘出手術は15日朝、同病院内で行われ、県防災ヘリのほか、タクシーによる搬送後、奄美空港から全国の受け入れ機関に向け空輸された。同病院での移植措置は昨年7月に続き、2例目となった。

移植の実施施設については、心臓は大阪大学医学部付属病院(50代男性)、肺は東京大学医学部付属病院(60代男性)と岡山大学病院(40代女性)、肝臓は名古屋大学医学部付属病院(40代男性)、腎臓と膵臓は同時移植で東京女子医科大学病院(30代女性)に、腎臓は聖マリアンナ医科大学病院(10代男性)―と公表。なお小腸は医学的理由で断念した。

家族によると男性は生前、臓器移植の特集番組をみている際、「自分ならドナー(臓器提供者)を選ぶ。誰かの命を助ける方が絶対にいい」と語っていたとして、家族は「生前の意思を尊重し、家族全員の意向で臓器提供を決意致しました。出来る限り多くの方々に命をつないでほしいと願っています」と移植ネットを通じ、コメントした。

同病院の石神純也院長は「ご家族の意思により臓器提供が行われ、施設として重大な責務を果たせたことに感謝を申し上げたい」と述べ、その上で「移植を受ける患者さまの経過が順調に行くことを期待したい」と語った。

臓器不全の患者を救う手段として、1997年「臓器移植法」が制定。2010年の改正で本人の意思が不明な場合でも、家族の承諾による臓器提供が可能となった。

移植ネットによると移植を待つ患者約1万4千人に対し、移植を受けられる人は年間400人程度。担当者は奄美新聞の取材に対し、「命を救うという善意で成り立つ行為。今後も趣旨の理解を広めていきたい」と話した。