岐路に立つ保護司

拠点施設として開設された北大島保護区更生保護サポートセンター(5月15日)

奄美でもなり手不足深刻
行政機関に適任者紹介求める対応も検討

 犯罪や非行を起こした人たちと面接を行い、生活上の助言や、就労の補助を行い、立ち直りを支える「保護司」。全国的になり手不足に陥り、人材確保が叫ばれている。2017年には平均年齢が65歳を超え、高齢化も顕著だ。奄美大島と喜界島を管轄する北大島保護区保護司会も例に漏れず保護司数は年々減少。定員74人に対し、19年度現在で63人。再犯防止により犯罪・非行を阻止し、地域住民の安全を守る砦=とりで=は今、岐路に立たされている。

 更生保護は国と民間が連携し、犯罪や非行を行った人たちを再犯防止による地域の治安改善を図るもの。中でも保護司は更生保護にボランティアで従事する民間人。保護観察所と連携し、同対象者の居住地域で面接。生活環境調整や再犯防止のサポートを行う。

 保護司法では保護司の定員は全国5万2500人と定められているが、全国保護司協会のまとめによると、18年(1月1日現在)で4万7641人。減少傾向にあり、6年連続で4万8千人を下回る。法務省の調査では保護司になることを断る人の多くが、「時間的な余裕のなさ」、「犯罪をした人などに対する指導、援助が不安」、「家族の理解が得られない」などを理由に挙げるとされている。

 こうした、なり手不足や保護司活動の困難化を踏まえ、同省は08年度から地域の関係機関・団体と連携しながら活動することができる拠点施設「更生保護サポートセンター」を整備する。奄美群島内では徳之島・沖永良部島・与論島の南3島を管轄する南大島保護区で18年度徳之島町に、北大島保護区では今年5月奄美市名瀬に開設した。

 同会事務局長の満田英和さんは、北大島保護区サポートセンターの利用について「会議のほか、保護司同士の情報交換の場となっている。打ち合わせの場所があることで、行政や関係機関との連携がとりやすくなった」と話す。また従来、同対象者か保護司の自宅で行われていた面接をセンターで行うことで、内容の透明化につながるほか、家族の理解を得ることが難しい保護司が安心して面接に臨むことができるようになるという。

 一方で周知が行き届いていないことに懸念が残る。「本当は子どものことで悩む保護者などの相談を受け、保護観察官などにつなげたいのだが…。今後はセンターの広報誌などを作り、管内の関係機関に活動を周知する必要もある」と満田さんは話す。

 周知不足以上の人手不足の要因が、「公的機関の再雇用制度」にあるという。満田さんは「“定職を持ちながら”というのは敬遠されがち。かつては定年退職した人に声を掛けていたが、今は退職後も再び働く人が多く、仕事が優先されてしまう」と頭を抱える。

 これまでは保護司の紹介で、欠員が出た地域での保護司を探す手法を取っていたが、なり手を見つけることが困難という。75歳が定年の保護司だが、同会の平均年齢も65歳ほどという。現状打開のためには、行政機関などに適任者を紹介してもらう場としての「保護司候補者検討委員会」を開催する必要性があるといい、同会では次年度以降に開催することを検討する。

 一方、満田さんは自身もNPO法人「すみようヤムラランド」の理事長として仕事をしながら保護司に従事する。近年では同会でも30~40歳代の仕事を持った若い世代が保護司となる例もあるといい、「仕事を持っていても活動できる」ことを、身をもって示している。

 「仕事と居場所を見つけ、社会の一員になってもらうことが更生につながる。自身の経験に基づき面接を重ねることで本音を言いあえる関係になる、やりがいのある仕事」と満田さんは語る。法務省の18年版「犯罪白書」によると、17年に刑法犯で検挙されたうちの再犯者率は48・7%。この20年で20%近く増加。18年に閣議決定された再犯防止推進計画に書かれた通り、「誰一人取り残さない」社会の実現に向け、保護司確保に保護観察所のみならず地元自治体が協力し、人員確保に向けた手を差し伸べることが求められるのではないだろうか。(西田 元気)