「遺跡生かし郷土教育を」

近代遺跡を生かした郷土教育などを訴えた講師の鼎さん

近代遺跡の報告や活用法紹介
あまみならでは学舎 瀬戸内町・鼎さん講師

 県立奄美図書館は18日、今年度最後の「第7回あまみならでは学舎」を奄美市名瀬の同館研修室で開いた。講師は、瀬戸内町教育委員会学芸員の鼎=かなえ=丈太郎さん。鼎さんは同町で発掘調査などを進める近代遺産について「教育的資産、社会問題を見つめ直す教材として、体験学習などの地域や世代を超えた交流に活用すべき」など訴えた。

 テーマは「近代遺跡を生かした郷土教育~シマの遺跡から日本の近代が見えてくる~」。約50人が参加し、調査状況の報告、遺跡の多様な意義などが紹介された。

 行政が取り組む埋蔵文化財について鼎さんは「古代や中世などに比べると、まだまだ近史跡の調査不足は否めない」と指摘。その上で「奄美大島には近代遺跡がないというわけではなく、全国的に見ても早い段階から近代化が進められた地域。歴史・文化的資産と同時に教育的資産としても生かすべき」などその重要性を解説した。

 久慈の白糖工場跡や水溜、西古見砲台などの調査・発掘成果を紹介した鼎さんは、太平洋戦争時の年表などと比較し「全国的にも先駆けとなる遺跡」と同遺跡を評価。地域に報告を重ねることで、郷土教育として地元中高生に広がる様子なども紹介した。

 最後、「奄美の歴史が教科書に載ることはほとんどないが蚊帳の外にいたわけではなく、世界の歴史に深く絡んでいたことを戦争遺跡は語っている」と鼎さん。「伝承が困難になっている今だからこそ、地域の近代史を見直し、再評価していく必要があるのではないか」など呼び掛けた。

 講座終了後は同学舎の閉講式も開催。6回以上の受講者12人に修了証が手渡された。