不法投棄後絶たず

奄美市などによって回収された不法投棄ごみ

犯罪という意識を
カメラ設置し監視体制強化

 奄美市では長年に渡ってごみの不法投棄が後を絶たず、対策に頭を悩ませている。同市の不法投棄監視員らが山間部を中心に毎日、監視パトロールを行っているが、ごみはなかなか減らない。今夏には世界自然遺産登録も控え、希少な動植物が生きる島として注目が高まる一方で、人目の付かない山の中では、ごみが散在した状態が続いている。このままで果たして「世界自然遺産の島」と胸を張って言えるだろうか。

 1月に名瀬保健所と建設会社や産廃処理業者らでつくる県産業資源循環環境協会奄美支部と合同で行った回収作業では、名瀬クリーンセンター近くの市道山田線沿いや本茶峠林道など計5カ所で、約1㌧のごみを回収した。道路脇の高さ10~30㍍ほどのがけ下には、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電が数台重なるように捨てられた場所やタイヤ、バッテリー、タンスなどの粗大ごみもあり、重機と人海戦術で撤去したが、まだまだ手が付けられていない場所も多い。

 約20年前から同市の監視員を務めている青木孝正さん(64)は、道路沿いの谷間などに無造作に捨てられた家庭ごみや家電製品などを見つけるたび、「犯罪という意識はないのだろうか」とため息をつき、行き場のない怒りと悲しみがこみあげてくるという。

 同市では、青木さんら監視員2人が名瀬と住用の山間部を中心にパトロールを実施。不法投棄の取締りとごみの回収作業などを行っている。平日は、一日で50~150㌔を走行、夜間のパトロールなども不定期で行っている。周辺の道路脇には「不法投棄禁止」などと書かれた看板を立て、注意を呼び掛けているが、看板のすぐ近くの谷間でごみが捨てられているなど、不法投棄は後を絶たない。

 市環境対策課によると、市が回収した不法投棄ごみは2016年が冷蔵庫などのリサイクル家電37台で、全体のごみの量は約4㌧。17年は同96台でごみ量3㌧、18年は同62台、ごみ量5㌧などとなっている。同課の平田博行課長は「十年近く前に捨てられたごみも多く、近年の不法投棄件数は減少している」としたうえで、「一部の心無い行動が貴重な奄美の自然を汚してしまっている」と指摘する。

 青木さんは夜間のパトロール中に、荷台に家電などを積んだ怪しい車両を見かけたこともある。ある程度車両の特定などができたケースもあったが、不法投棄を断定するには至らなかった。「やはり、投棄現場を押さえるしかない。監視の目を強化し、不法投棄者を見つけ出したい」と語気を強める。

 同市はこれまでに不法投棄のあった場所やその周辺に監視カメラ数台を設置した。結果、その後の投棄がなくなるなど一定の効果も出ているという。新年度は、さらに増設も計画。林道など不法投棄の多い道路入り口に設置し不審車両の割り出しなどに力を入れることも検討している。

 ごみの不法投棄は廃棄物処理法で5年以下の懲役または1千万円以下の罰金などが科せられる。市は奄美署と連携した対応も強化。同課の平田課長は「環境保護などの啓発活動だけでは不法投棄を減らすことはできない。犯罪であるという認識に立ち、厳正に対処したい」と話し、今後も同署の協力を得ながら摘発なども視野に監視体制の強化を進める考えだ。

 不法投棄されたごみは、奄美の美しい景観を損なうだけでなく、有害な物質を含んだバッテリーなどは土壌汚染の原因にもなる。回収、処分には年間数千万円もの税金も費やされるなど市民負担となっている。

 学校などでは子どもたちに自然保護などの環境教育が行われている。その一方で、模範となるべき大人が平気で不法投棄をしていることを知った子ども達はどう受け止めるのか。世界自然遺産の島として、奄美を訪れた観光客、そして未来を担う子ども達に誇れるふるさと奄美を残すためにも、「不法投棄は絶対に許さない」という思いを島民一人ひとりが持つことが求められる。

(赤井孝和)