観光客減、業界に影

観光客を送迎するレンタカー事業者の車両が並ぶ(写真は奄美空港内)

予約後、「やっぱりキャンセルで」
奄美大島内のレンタカー

 新型コロナウイルス感染症の拡大懸念から、予約したレンタカー利用のキャンセル依頼が止まらない。例年多くの観光客が降り立つ奄美空港=奄美市笠利町=近くのレンタカー事業所からは「本当に厳しい状況で、先月からキャンセルが入っている。一旦予約したが、『家族と話し合って旅行自体を取りやめた』というケースも少なくない」と悲痛な声が聞かれた。

 事業所関係者によると新型コロナ感染の症例が広がり始めた2月中旬以降、キャンセル依頼が相次ぐ。春の観光シーズンに向け、卒業記念や家族での旅行予定者からだという。

 家族旅行で予約したあるケースでは、申し込みした数日後に感染拡大のニュースを受け、「旅行を決めたが、移動時や人混みでの感染リスクから、やっぱり無し(キャンセル)で」。こうした申し出は現在も増えているが、感染不安の理由に事業所側もあきらめ顔だ。

 申し込みは関東や関西方面が大半。感染を警戒した年配者がキャンセルする一方、若年層は予定通り来島している。

 大阪市から友人と来島した会社員の男性(30)は「休みを申請したら、上司から奄美は(感染面で)安全だからと言われた」。初来島した医療関係で勤務する東京の女性会社員(24)は「奄美では住民がマスクをしていないので少し驚いた。安心して観光できそう」とそれぞれ複雑な心境を語った。

 レンタカー利用のキャンセル増は、島内の行事や大会イベントが中止となっていることも影響した。

 ある事業所の担当者は「この時期は観光客と群島内からの入込が多いが、どちらもキャンセルが出ており、配車の回転は例年より3割以上落ち込んだ」とした上で、「コロナの影響がどの程度続くか予測できない。売り上げは相当厳しい数字になりそう。行政の救済措置を願わずにはいられない」と危機感を募らせている。