紙テープのない異例の見送り風景となった奄美市の名瀬新港(27日夜)
異動や転校での多くの人が島を離れる3月末。新型コロナウイルスの影響で全国的に自粛ムードが広がる27日夜、奄美市の名瀬新港岸壁では恒例の紙テープが見られない、例年とは装いの異なる見送り風景に。そんな中でも訪れた人々は転出者らとの別れを惜しみながらも、新天地での活躍を祈った。
名瀬新港での見送りといえば、フェリー出港時に岸壁を埋め尽くす人々と、転出者を結ぶ色とりどりの紙テープ。年度末の名瀬街を彩る風物詩ともいえる。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、県大島支庁建設課が見送り者のマスク着用と「最小限の人数での実施」を呼び掛ける異例の事態に。27~31日の期間、岸壁の一部区域を開放するものの、規模縮小が求められている。
県本土に向かう定期フェリー「クイーンコーラルプラス」が名瀬港に寄港した同日午後9時ごろには、同港ターミナルビル2階に多くの人出が見られた。同市名瀬の県立奄美高校の生徒・教員らは、西美幸さんと松本ゆりかさんの壮行会を実施。卒業生らも訪れ、2人との思い出を語った。
松本さんは「5年間、可愛い生徒に囲まれ毎日充実した奄美生活だった」と振り返り、「臨時休校で生徒たちと会うことが出来なかったのが心残りだった。(新型コロナウイルスの関係で)心配な時期に、こうして集まってもらったことに対し感謝でいっぱい」とも話した。
教え子の同校家政科1年の泉さくらさん、新島楓夕=ふゆ=さんは目に涙を溜めながら「松本先生は生徒第一で考えてくれる大好きな先生。休校にならなければもっと思い出を作りたかった」と語った。
フェリー出港の時刻には岸壁に多くの人が集まり、「がんばれー」など転出者の新生活を応援。思いをつなぐテープはなくとも、門出を盛大に激励する姿が目立った。
学校によっては25日の離任式の際に出発式を行い、港での壮行会を実施しないところも。なお、大島支庁建設課は自治体の教育委員会を通じてできる限りの見送り自粛を各校に通達している。