コロナ・ショック 試練の先に~1~

観光物産連・境田事務局長

近年観光の柱に位置付けられていたクルーズ船寄港も中止が相次ぐ(写真は昨年名瀬港に寄港したウェステルダムのツアー客)

「内需で地域経済を」
観光面の打撃

 新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴い、国が不要不急の外出を控えるよう呼び掛けたことで、移動やイベント開催の自粛要請、航空会社の運休も相次ぎ、ヒト・モノ・カネが動かない経済の停滞を招いている。奄美にとっても観光産業を中心に宿泊や飲食など業界内の需要は落ち込んでいる。事業の存続に不安を抱えている、それぞれの現場の声を聞いた。

 「人や物流の移動が増える新年度に入り、島外からコロナウイルスが侵入するリスクが高まっている。大都市圏での感染者数が増加している状況では、観光来訪は当分期待できないだろう」

 一社・あまみ大島観光物産連盟(有村修一会長)の境田清一郎事務局長が危機感を募らせるのは、3月に開いた総会で奄美大島島内での各業種の現状が報告されたからだ。

 宿泊施設は島外からの団体旅行を中心に3063件延べ9607人分の予約がキャンセル。4月予定分も含んでおり、平均するとホテルや旅行で予約された3割近くに達すると推察された。

 年度当初に旅行代理店が計画した島内ツアーも申し込みキャンセルが相次ぎ、中止もしくは最少催行数ギリギリで実施したツアーも出ていたという。

 宴会施設での歓送迎会など大口での集会も自粛ムードの余波を受けた。219件延べ4420人に及ぶ相次ぐキャンセルに、業界内から「年度末、新年度の様々な集まりが出来ない。最悪のタイミング」との声も。

 バス・タクシーは名瀬港寄港を予定していたクルーズ船ツアー中止が影響し、5月までに322件延べ871台、島内の主な観光スポット・施設では250件延べ3764人が、それぞれキャンセルとなった。

 これらの数値は3月中旬までにまとめられたもので、境田事務局長はあくまで報告上の数値で、新年度に入り、事態はさらに深刻化していると見る。「国内外での感染者数急増に比例してキャンセル数も加速度的に出ている。感染終息が見えない中、厳しさを増すことを覚悟しなくてはならない」。

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 観光立島を目指す奄美にとって、入込客の激減は地元経済に大きく打撃を与える。新型ウイルス感染拡大の終息が見通せない中、関係者も手をこまねいているわけではない。地域で経済を回す工夫を呼び掛ける動きも出てきた。

 境田事務局長は観光業界の活性化策として、企業や事業所間の交流事業を提案する。行政支援を絡めながらスタッフ研修を目的に宿泊、商業、観光体験プログラムを相互利用するというアイデアだ。

 行政予算を活用して、チケットやクーポン制による施設利用、プログラムを行うことで利用促進やスキルアップを狙う。従業員を抱える事業所の業務造成につながることを強調し、売り上げにも貢献する業界支援を訴える。

 「外から訪れる観光客の消費に頼ることができないいまこそ、日頃は競い合う業界が協調して取り組むことが大切。内向きに転換できる道を考えるべき」と持論を展開。

 また業界だけでなく、若い世代の関わりにも触れた。高校など学校の授業カリキュラムの中に現地学習として、島内の「あまみシマ博覧会」の体験型プログラムを取り入れるもの。郷土の魅力を知る学習だ。

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 感染者数が急増し、国の中央(東京)はいまや重大な局面を迎えている。厳しい状況の長期化も見据えないといけない。

 境田事務局長は「金銭的な支援も大事だが地元の零細・中小事業所の売り上げが少しでも立つよう、実効性のある施策を行政側に求めたい。いまは我慢の時。一日も早い感染拡大の終息を願いたい」と語った。