コロナ・ショック 試練の先に~2~

奄美市社交業飲食業組合・伊東理事長

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で客足が減った奄美市の「屋仁川通り」

客足遠のく歓楽街 「感染者出さないことで安全アピール」

 奄美大島最大の歓楽街「屋仁川通り」も新型コロナウイルスの感染拡大により、苦境に立たされている。週末になれば、多くの観光客や常連客でにぎわっていた通りは今、かつてないほど静かだ。政府の専門家会議の「夜の歓楽街が『クラスター』(感染集団)となっている」などの指摘を受け、夜間の外出を自粛する動きが広がるなど、先行きの見えない日々が続いている。

 「2月ごろから影響が出始め、3月に入り一気に客足が減った。4月も厳しい状況に変わりはない。居酒屋や接客を伴うスナックなど店舗形態も違うため、影響も店ごとに違うようだが、どこも厳しい経営環境にあることは間違いない」。約90店舗が加盟する奄美市社交業飲食業組合の伊東隆吉理事長は、多くの店舗が厳しい経営を強いられている現状を指摘する。

 「何とか、みんなで協力してこの危機を乗り切ろう」と2日、同組合の理事ら約10人が集まり、現状や今後の対策などについて話し合った。しかし、伊東理事長は、「先行きが見えない状況だけに、これといった妙案はなかなか出てこない。感染拡大が懸念されているなか、『屋仁川に飲みに来て』と声を上げるわけにもいかない」と苦しい胸の内を明かす。

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 客足に変化が出始めたのは、大型クルーズ船内での集団感染などが報じられ始めた2月初めごろ。観光客を中心に来店客が減少。名瀬港に寄港予定だったクルーズ船のキャンセルが相次ぎ、宿泊客も減少し始めると、観光客らをターゲットにした飲食店では10人程度のグループの予約キャンセルが相次ぐなど、しだいに影響は拡大していった。

 さらに追い打ちをかけたのが、政府の外出自粛と学校の休校要請だった。3月は学校や職場などの送別会シーズンで、居酒屋などでは多くの団体客の予約が入っていた。しかし、自粛ムードが広がるなか、数十人規模の送別会のキャンセルが相次ぐなど、団体予約のほとんどがなくなり、あっという間に客足が減った。4月に入っても団体客の予約はほとんどない状況が続いている。

 同組合では、具体的なキャンセル数や各店舗の影響額などは調べていないが、伊東理事長は「一日の売り上げが1万円減ったとしても1カ月では30万円になる。実際はそんな数字では済まないだろう」と話す。店舗の多くが個人営業で、数十万円の売り上げ減少は、「死活問題。このままだと店を閉める所も出てくるかもしれない」と伊東理事長は危惧する。

 ただ、島内で感染者が確認されていないことから、個人で来島する島外観光客や地元の常連客などは一定数いる。

 同組合によると、今のところ閉店に追いこまれた店などはなく、従業員の解雇には至ってないという。伊東理事長は「個人客で何とか営業できている店も少なくない。だが今後、島内で感染者が確認されるような事態になったら、市内の飲食業界は壊滅的な影響を受けるかもしれない」と不安を口にした。

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 同組合は3月9日、手洗いやうがい、店内の消毒などの感染対策の徹底を加盟店舗に呼び掛けた。接客業は、近距離での会話などを伴うことから、予防対策に念を入れるよう特に注意にしている。

 7日、政府は緊急事態宣言を出した。これまで以上に人の移動や行動などが制限されることが予想される。伊東理事長は「今まで以上に厳しい経営を強いられるのは間違いない。ただ、国内の広い範囲で感染が確認されているからこそ、感染者を出さないことが、安全安心のアピールになる。今は、感染源をできる限り排除し、地域住民が安心して楽しめる環境をつくるしかない。先行きは見通せないが、いつか必ず終息する日はやってくる。その時には、是非多くの人に、屋仁川に来てもらえるよう最善を尽くしたい」と話す。