IUCN勧告「世界遺産委員会の日程に合わせる」

例年より遅く出される可能性
奄美・沖縄登録

 ユネスコの諮問機関IUCN(国際自然保護連合)メディア担当者は20日、世界遺産委員会に先駆けての勧告について、奄美新聞の取材に対し「世界遺産委員会の日程に合わせる」と回答した。同機関の勧告は例年5月に行われるが、今年は新型コロナウイルスの影響により時期が不透明となっていた。世界遺産委員会の延期後の日程に合わせ、勧告も例年より遅く出される可能性が高まった。

 同機関は世界遺産委員会の6週間前に、日本政府に勧告を出す役割を担っている。2018年に政府が奄美・沖縄の世界自然遺産登録を目指した際は「登録延期」の勧告を出した。これを受けて政府が推薦を取り下げたという経緯がある。今年は「登録推奨」の勧告が出されるかが注目されていた。

 6月29日から行われる予定だった世界遺産委員会に合わせ、当初は勧告も6週間前の5月上旬に出るとみられていた。しかし、新型コロナウイルスの影響により世界遺産委員会の延期が発表された。

 これに伴い、IUCNの勧告も同委員会の延期に合わせて例年より遅れるのか、例年通り5月上旬に出されるのかが不透明となっていた。

 同機関のメディア・コミュニケーション担当官マティアス・フィヒターさんは「勧告のタイミングは世界遺産委員会の期限と関連しています。IUCNはユネスコが規定する期限に従います。同委員会の延期後の日程が分かり次第、勧告の日程も発表することができます。現在は、ユネスコからの詳細情報を待っている状況です」と回答した。

「状況静観」「登録を活力に」
IUCN勧告延期見込みコメント

 ユネスコの諮問機関IUCNの勧告が例年より遅れる見込みであることについて、関係者からは「状況を静観する」など慎重なコメントが出た。また、「もし世界遺産登録されたら、コロナで落ち込んだ奄美の精神的活力になってほしい」など、登録に期待を寄せる意見も寄せられた。

 世界遺産委員会の延期に伴い、それに先駆けて行われるIUCNの勧告の時期が不透明になっていたが、このほど、同委員会の延期後の日程に合わせて、勧告も例年より遅く行われる見込みであることが、同機関のメディア担当者への取材により明らかになった。

 環境省自然環境局自然環境計画課の担当者は、環境省全体としてのコメントは出せないとした上で、担当者の見解として「IUCNの勧告は世界遺産委員会の6週間前までに行うというルールがある。今回の回答は、そのルールを説明したに過ぎないと理解している。引き続き淡々と準備していきたい」と話した。

 奄美野鳥の会会長・鳥飼久裕さんも同じく「新型コロナウイルスが流行している現在は状況を静観したい」と慎重な姿勢を示した。一方で「世界遺産委員会や勧告が遅れたからといって、奄美の自然遺産候補としての価値が変わるわけではない。登録されることを信じて楽しみに待ちたい」と希望を新たにした。

 NPO法人徳之島虹の会理事長・政武文さんは「2018年の登録延期に続き、今回は世界遺産委員会が延期になった。機運の低下は心配。もし世界遺産登録がされれば、その時はコロナ流行によって落ち込んだ奄美・沖縄の経済や、人々の精神面での活力剤になってくれれば」と期待をにじませた。