新救急艇「おおとり」が就航

4代目となる新救命艇「おおとり」が就航。地元関係者にお披露目


中央に処置用ベッドが配置された真新しい救護室内。見学する鎌田愛人町長(左から2人目)

「町民の救命率向上に期待」
瀬戸内町 21年ぶり更新、操舵室2階に

 「海の〝救急車〟の救命率向上に期待」―。瀬戸内町の新しい救急艇(救急患者搬送艇)「おおとり」(総トン数19㌧、最大搭載人員12人)就航お披露目が22日、古仁屋の瀬久井港で行われた。新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の観点から参加者を鎌田愛人町長ら地元関係者のみに限定して開催した。1999年建造の旧艇の老朽化に伴い、21年ぶりに更新され、4代目の救急艇となる。大島地区消防組合瀬戸内分署(長岡久行分署長)に配備。参加者は、加計呂麻島、請島、与路島の離島等からの急患搬送などを担う救急艇の活躍を祈念した。参加者は、生間港折り返しの搭乗体験もした。

 近年は年間平均160~170件の救急・救命出動している。鎌田愛人町長は「操船の安全性が向上し、大変うれしく思う。4代目の救急艇の活動によって救急患者の救命率向上に期待している。島民(町民)が安心して住める町づくりにつながる」と述べた。

 救急艇は瀬戸内町が建造し、瀬戸内分署に無償貸与した。救急艇の係留地(待機地)は瀬久井港内。県の2019年度「特定離島ふるさとおこし事業」に採択され、整備費は約1億2200万円(県補助率80%)。今年3月竣工。全長18・60㍍。最大速力31?(時速約57㌔)。同分署によると、県内市町村で救急艇が配備されているのは、瀬戸内町のみ。

 同分署によると、甲、乙の2部隊(各船長1人、救急隊員3人)交替で24時間態勢で業務に当たる。隊員以外で最大8人が乗船可能。急患搬送以外に海難事故対応、行方不明者の捜索活動にも従事しているほか、消防ポンプも装備されており、船舶火災の消火活動に対応できる。消防ポンプは、可搬式の小型ポンプとなり、修理がしやすくなった。「加計呂麻島、請島、与路島などで火災が発生した場合には、人員や消防資機材を搬送している」。

 旧艇との違いについて同分署は①操縦する操舵室が2階になり、視界が広がり、船長が自分で安全確認がしやすくなり、安全性が充実した②救護室にカメラが設置され、操舵室で船長が患者の状況を把握しながら操縦できる③バリアフリー化が進み、患者、家族、隊員らの安全性が向上④救護室の横幅が10㌢広くなり、高さが25㌢高くなった―ことなどを挙げた。

 昼間は久慈湾での救急要請に対応。天候が良ければ遠い花天、管鈍、西古見集落には約30分で到着し、陸路の消防車より速い。加計呂麻島の生間港には10~12分、請島30~35分、与路島には約40分で到着する。
 Z部隊の船長は高木康介さん(33)、船長代理は元啓大さん(29)、甲部隊の船長は伊藤之浩さん(33)が務める。高木船長は「1分1秒でも早く行って救命につなげたい」と述べた。