コロナ・ショック 試練の先に~6~

奄美大島商議所・有村会頭

新型コロナウイルスの影響で休業となったことを知らせる飲食店(4月25日、奄美市)

「できる限り雇用維持を」
休業相次ぎ苦境に立つ企業

 奄美大島でも17日に新型コロナウイルスの感染が確認され、地域の経済活動は一段と制約される事態となった。奄美市内の宿泊施設や飲食店は次々と休業に追い込まれ、幅広い業種の中小・小規模事業者の経営が危機的状況に陥っている。なかでも観光関連産業などの需要がほぼ消滅したことにより、地域経済への影響は時間の経過とともに深刻さを増している。

 奄美大島商工会議所の有村修一会頭は「これまでに経験したことのない事態が今、目の前で起きている。倒産や廃業を防ぐため、国には、さらなる支援体制の強化と拡充を求めたい。地元企業には、できる限り従業員の雇用を維持するようお願いしたい」と話す。

 自身が経営するグループ企業も大きな影響を受けている。経営するホテルは、3月から徐々に予約客が減り始め、4月に入ると、新規の予約はほぼゼロの状態となった。ホテルの宿泊状況が表示されるパソコン画面は、ほとんどの部屋が空室を表す緑色で染まった。それでも、「地域経済の旗振り役として営業は続ける」つもりだった。

 しかし、島内で感染者の発生が明らかとなり、島内5市町村が不要不急の外出自粛などを要請する「緊急共同メッセージ」を出す事態を受け、「休業を決断するしかなかった。奄美の経済、観光の灯を消すわけにはいかないと考えていただけに残念」と、苦しい心境を吐露する。

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 島内企業に影響が広がるなか、同商議所が10日に開いた緊急個別相談会には、飲食や観光など島内の54事業所の経営者らが相談に訪れた。運転資金や設備投資などの融資や休業補償など雇用調整助成金に関するものがほとんどだった。

 今月、中心市街地で飲食店を開業した女性(40)は、「コロナの影響もあり、開店延期も考えたが、すでに雇用した従業員の休業補償を受けるには店を開業しないといけない。ただ、感染が広がり、自粛が求められている状況で開業すると、店のイメージにも影響しかねない」と頭を抱える。

 観光業を営む30歳代の男性経営者も「信用に関することなので具体的な営業内容は明かせない」とした上で、「夏の世界自然遺産登録を見据え、新たに車両を購入するなど観光客の受け入れに必要な機材購入費として借り入れた200万円の返済の見通しが立たない」と深刻な経営環境を明かし、「無利子の融資が受けられるというが、結局は借金。すでに多額の借り入れを抱えるなかで、返済の当てがなければ借りるわけにはいかない」と不安を口にした。

 県信用保証協会が15日に公表した新型コロナ関連の融資保証申し込みは、660件106億4700万円に上った。4月に入り申し込みは急増しており、今後、件数、金額ともさらに増える見込みだ。

 先行きの見えない景気動向に有村会頭は「ほとんどの企業が厳しい経営環境に置かれているのは間違いない。ただ、感染終息後、地域経済を早期に立て直すためにも雇用だけは何としても守ってほしい。厳しい時だからこそ、従業員の生活を守る姿勢を見せてもらいたい」と、経営者である自らにも言い聞かせるように語った。

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 国はコロナ感染防止で地方自治体が施設や店舗などに休業要請する際に支払う協力金について、緊急経済対策に盛り込まれた「地方創生臨時交付金」の活用を認める方針を示し、補正予算に1兆円が盛り込まれる見込みだ。24日には、三反園訓知事が休業などを要請した事業者に対し、最大30万円の協力金を支給する考えを明らかにした。

 有村会頭は「30万円で経営を維持するのは難しいが、県の心意気のようなものは感じた。今後も様々な形で、融資や補償などの制度が導入されるだろうが、事業者が利用しやすい制度になるよう様々な形で国に要請していきたい。事業者には諦めずに商議所や自治体などに支援策を相談してほしい」と呼び掛け、地元自治体などに対しては、「さらなる感染者を出さないためには、徹底した感染防止策は必要だが、過度に経済活動が委縮することがないよう、地域の実情に応じた対応を求めたい」と要望した。