コロナ・ショック 試練の先に~9~

すみようヤムラランド・満田理事長

西仲間の民泊施設を運営する和田代表

好調民泊事業の今後 「積み重ねで評価問われる」

 地域文化の継承活動に取り組むNPO法人「すみようヤムラランド」を立ち上げた満田英和理事長。奄美市住用町内で民泊と体験プログラムを組み合わせた着地型観光として3年前にスタートした「すみよう体験民宿」は、着実にリピーターを増やしてきた。満田理事長は「このコロナ禍は大きな災害レベル。乗り越えていけるかは、これまでどれだけ〝おもてなし〟を積み重ねてきたかが問われてくる」と話す。

 2017年5月1日、同町内集落で個人宅を宿泊所として観光客を受け入れる民泊事業が始まった。

 島料理やシマ唄、三味線体験、大島紬の着付け―など郷土文化に特化した体験プログラムがほかにはない売り。現在、▽パンの木・しょうてん庵(西仲間)、▽ルパン爺とすずめの宿(見里)▽ほぉらしゃ家(役勝)―の3宅が営業している。

 宿泊と自然散策体験メニューが味わえるとあって、奄美大島島外から家族連れや友人連れが年間通じて訪れる。最初の1年は50組約170人が利用。その後も着実に利用者数を伸ばし、半数がリピーターだ。

 「最初はこんな手づくり感満載のメニューでいいのかと思った。ただ地元で出来ることの観点でメニューを絞り、他所と比べず身の丈にあった対応につとめることこそ、最終的に持続できると考えた」

 宅ごとにファンがいる民泊の魅力について満田理事長は飾り気のないスタンスを貫くことを強調。口コミで増えたファンが根付くことで持続可能な観光を形成できると見ている。

 今年に入り、各宅には春休みや大型連休(GW)中の予約が入っていた。その矢先、新型コロナウイルスの感染拡大による全国的な移動自粛の余波でキャンセルが相次いだ。さらに国の緊急事態宣言を受け、全宅の臨時休業を余技なくされた。その後も予約の打診がなかったわけではないが丁重にお断りし、GW以降の受け入れを取りやめた。

 夏場の予約など、リピーターからいまも問い合わせはある。

 「滞在中は楽しんでもらおうと、周囲の協力を得ながら頑張ってきたことがリピーターづくりにつながった」

 同NPOは今年4月から「住用観光交流施設」=同町摺勝=の指定管理者に指定され、満田理事長はその運営活動にも手腕をふるう。観光を含め全国の経済活動の低迷は厳しく、施設運営、民泊事業の見通しは正念場を迎えているが、

「子どもが集落散策や島料理づくりなどを気に入ってくれて延泊してくれた家族のケースは少なくない。終息後リピーターの皆さまが再び奄美を訪れてくれることを信じている」と語った。

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 NPOメンバーで、3宅の一つ「パンの木・しょうてん庵」(和田美智子代表(76))では奄美の特産品を使った島料理や菓子づくり、大島紬の織り体験が好評だ。NPOや集落とともに、世界自然遺産登録を目指す流れをきっかけにした自然や地域の持つ魅力の掘り起こし、島外発信に取り組んできた。

 訪れた家族が話した「沖縄とは違う魅力がある」との言葉に自信を持つ和田さんは「常連さんとのつながりは今後もなくならない」と力を込める。持続化可能な職業にするためには、どれだけ付加価値をつけるかが重要。地元にその魅力は十分あると確信する。

 その上で「(リピーター増は)奄美に行きたいという明確な目的を持った旅行者のニーズに応えられるよう知恵を絞り、工夫してきた結果だと考えている。新型コロナの感染終息後にお客さまが旅行を計画した際、奄美をどの順位で選択してくれるか楽しみなんです」と和田さんは自信をのぞかせた。