泥染めの泥成分も

奄美市住用湾内でのサンゴ掘削作業の様子(提供写真)

環境や地域産業の変化反映
住用湾のサンゴ調査
喜界島サンゴ研 科学誌に論文掲載

 喜界町のNPO法人「喜界島サンゴ礁科学研究所」(渡邊剛理事長)はこのほど、奄美大島住用湾内に分布する造礁サンゴの研究論文を発表した。サンゴの骨格中に含まれた、洪水や河川の土砂流入跡、特産品である大島紬の製造工程で用いる「泥染め」の泥成分から、環境や地域産業の変化を反映した成長メカニズムを解明したという。論文は英科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・リポート」に12日付で掲載された。

 サンゴは年輪のような骨格を形成する。その成長スピードは1年約1㌢とされ、主要成分のバリウムとカルシウムの成分比率から環境変化の推定できるという。渡邊理事長を中心とする研究チームは2010年奄美豪雨による水害が沿岸のサンゴに及ぼす影響を検証しようと6年前に研究をスタートした。

 奄美市住用町の市集落沖合に分布する造礁サンゴ群(ハマサンゴ)から採取した約1㍍の骨格中成分を分析。同町の過去46年間の豪雨・洪水、産業発展の変遷を照らし合わせ、成分比と成長率の変動から、①1968~95年(昭和後半から平成初め)②96~2014年(平成)―の2期間に分けた

 検証を重ねたところ、①は紬産業が活況だった時期と一致し、生産量との相関関係から泥染めの泥を含む土砂が流れ込んでいた時代、②は豪雨や開発による土砂流入のタイミングから、土砂流入が成長を阻害する要因―と総括。造礁サンゴの骨格は「環境に合わせながら成長している」と結論付けた。

 渡邊理事長は地域の産業発展がサンゴの成長に影響を与えていたとする研究結果について「予想外」と驚きを隠せない。その上で「サンゴが人間の生活に密接にかかわってきたことがあらためて解明された。今回の成果を元に、この手法が世界各地で広がってくれたら」と語った。

 論文は同NPOホームページで見ることが出来る。