ミカンコミバエ誘殺 6月、県内26匹と急増

ミカンコミバエ誘殺用のトラップ。6月、鹿児島県内では誘殺数が増加した

大半屋久島、薩摩川内市離島も
沖縄のように「予防防除を」

 農林水産省植物防疫所は30日、週まとめで公表しているミカンコミバエ(果樹・果菜類の害虫)の誘殺状況を更新した。6月に入り県内では26匹誘殺と急増、このうち20匹と大半が屋久島で、薩摩川内市の離島・甑島でも初めて確認された。九州では熊本、福岡の両県でも誘殺があるが、沖縄県では4月に1匹の誘殺以降、ゼロが続いている。

 まとめによると、県内では6月9日~15日の週に2匹(屋久島)、16日~22日の週に8匹(屋久島7匹、甑島1匹)、23日~29日の週16匹(三島村・黒島1匹、屋久島11匹、甑島2匹、瀬戸内町2匹)。最多は屋久島で一日に10匹も誘殺されることもあった。発生地の台湾、フィリピンから流れ込む気流が確認されていることから、門司植物防疫所は気流による飛来の可能性を指摘している。

 九州では、鹿児島県以外では熊本県で1匹(23日~29日の週、天草市)、福岡県で2匹(16日~22日の週、いずれも北九州市で)の誘殺があった。

 一方、発生国に近く定着を未然に防止するため予防防除(トラップ・寄主果実調査、誘殺するテックス板の地上散布・航空散布を年3~4回実施)が行われている沖縄県では、5月、6月は誘殺ゼロとなっている。

 鹿児島県内における誘殺状況について、昆虫生態学が専門で、奄美大島で緊急防除が行われた際の農水省の防除対策検討会議メンバーだった藤崎憲治氏=京都大学名誉教授=は「ミカンコミバエは発生国の中国でも増えており、さらに温暖化で北上している。今回の誘殺は、こうした発生国から気流に乗って飛来したものと予想されるが、飛来後の定着を防ぐためにも早く対応することが重要。沖縄県のように鹿児島県でも予防防除に取り組む必要があるのではないか」と提言する。

 藤崎氏の著書(「ミカンコミバエ種群の再侵入と今後の侵入害虫対策の方向性」)によると、ミカンコミバエは東南アジアに生息するが、ハワイ、ミクロネシア、仏領ポリネシアなどにも移入分布し、かんきつ類をはじめとする多くの熱帯性果樹類、トマト、ピーマン、ナスなどの果菜類の果実を加害する、「広食性の世界的大害虫」。寄主果実に産卵し、産卵数は「1世代に1雌当たり最大1千個ほどにも達する、きわめて多産の昆虫であり、1~2日で孵化=ふか=して幼虫は果実を内部から食害するため、害虫として恐れられている」。世代交代の例として「沖縄では夏季では1世代に約1カ月を経過し、年間8世代も繰り返すことが可能であることが確認されている」。

 今後の対策の在り方としては、「地球規模の気候変動が起きつつある現在、地域や国境を越えた広域を視野に入れた広域的防除やより長期的な発生動態の予測のためのモニタリングなど、戦略的な観点に立った総合的害虫管理あるいは植物保護が必要になっていく」と指摘している。