ピンチの今こそ地元で人材確保

有村会頭(右)に要望書を手渡した武下義広商工観光部長(中央)、小屋敷所長(左)

新卒求人の早期提出を
市と職安、商工会議所に要請

 奄美市商工情報課と名瀬公共職業安定所(小屋敷悟所長)は14日、奄美大島商工会議所(有村修一会頭)に対し、2021年度の新規学卒者(高卒)向け求人を早期に提出するよう要請した。人材の島外流出対策が狙い。要請を受けた有村会頭は「コロナ禍の今こそ地元志向が高まっている。長期的な視点で優秀な人材を確保するチャンス」として、会員事業所に求人の提出を呼び掛けていく考えを示した。

 小屋敷所長によると、近年の高校卒業者は管内の就職が約1割で、9割が島外へ就職しているという。高齢化が進む中での人材流出を懸念し、「一人でも多くの優秀な人材が地元に残って就職し、活力ある奄美地区を築いてほしい」と要望した。

 2019年度の同職安管内における新規学卒求人は、過去最高の157人となり、売り手市場だった。しかしコロナ禍で状況は一変。2020年3月の有効求人倍率は3月が0・95倍、4、5月は0・71倍と厳しい状況が続く。

 そのような状況下でも、都市部での感染拡大を受けて地元での就職を希望する生徒が増える可能性があり、受け皿となる地元企業の求人提出が不可欠だ。

 高校側の事情もある。臨時休校を受け、全国高等学校長協会、主要経済団体、文部科学省、厚生労働省は就職活動の開始を例年の9月16日から1カ月遅らせ、10月16日からとした。しかし、各高校の三者面談は例年通り夏休み期間に行われる可能性がある。そのため、7月には一定数の求人が公開されている必要がある。小屋敷所長は「今からでも遅くはないので求人の提出を」と要請する。

 また、コロナ禍を受けて、保護者の間でも地元志向が高まっているという。「感染リスクが高く、外出が制限される都市部よりも、安心感のある地元で就職してほしい」と望む保護者が増えているという。

 要請を受けた有村会頭は「観光業・飲食業を中心に減益が見られるが、堅調な成長を見せる業種もある。コロナ禍の今こそ、地元で優秀な人材を確保できるチャンスととらえる。長期的な目線で新卒者を採用し、人材育成するよう会員事業者に案内していきたい」と話した。