富川会長所蔵のフタオチョウ標本。体の小さいものがオス(上)、大きいものがメス(下)
沖縄県の県指定天然記念物のチョウ・フタオチョウが近年、奄美大島でもよく目撃されるようになってきている。奄美市笠利町から名瀬までの広範囲で目撃情報があり、特にヤエヤマネコノチチなどの樹木の周りで見られやすいという。
フタオチョウはタテハチョウ科フタオチョウ亜科フタオチョウ属のチョウ。台湾や東南アジアに生息する。幼虫のエサはヤエヤマネコノチチやクワノハエノキといった植物。成虫は樹液や腐敗した果物に飛来する。
日本では従来、沖縄本島のみに生息し、同県の指定天然記念物となっていた。2016年ごろから奄美大島北部でも目撃・捕獲されるようになった。
奄美昆虫同好会の富川賢一郎会長によると、沖縄から何らかの原因で迷蝶として飛来した可能性もあるとのこと。しかし定着については「定着とは、通年で卵・幼虫・さなぎ・成虫が見られる状態をいい、フタオチョウが定着しているかについては、まだはっきりしたことは言えない」と話した。
元鹿児島県立博物館・学芸主事(昆虫担当)で県立奄美高校の金井賢一教頭によるとフタオチョウは現在、笠利町の用岬から名瀬の小宿エリアまで広い範囲で見ることができるという。特に湿ったところや、ヤエヤマネコノチチの樹木付近を好む。金井教頭もヤエヤマネコノチチの梢付近で多数のフタオチョウが飛んでいるのを目撃したという。
フタオチョウはアカボシゴマダラなど奄美大島の固有種とエサを同じくしており、影響が気になるところだが、金井教頭は「フタオチョウが増えたことで、在来のチョウの生息数が減少したなどの研究はない。在来のチョウを脅かしているということはないと考えられる」と指摘した。