選挙ポスターの掲示板を眺める町民=与論町=
【沖永良部】与論町議選が25日、告示された。新型コロナウイルスにより1カ月間続いた来島自粛要請が2日前に解除されたばかり。現職は、感染予防のため街宣車の使用をやめた。新人と元職も、有権者との距離間に悩みながら島内全域を回り認知度アップを図っている。
現職の一人は「これまでの選挙と全く違う。新型コロナで言いたいことも言えない」と話す。クラスター(感染者集団)発生後の先月27日に開いた全員協議会で、現職9人は選挙期間中、街宣カーを使った選挙活動を行わないと決めた。別の現職は「自粛ムードのなかで動くのはどうなのか。基本的に静かにしておく。出陣式も中止した」。集会や街頭演説も控え、電話での選挙活動を考えているという。
新人候補は感染予防対策に神経をとがらせている。「顔を覚えてもらうには街宣車で島中を回るしかない」として、マスクやフェイスシールド、手袋、アルコール消毒液などを準備した。出陣式は、陣営関係者以外には連絡せずに行った。「親せきが少ないので、浮動票や若い人を取り込みたいが、どうやって訴えていけばいいのか」とこぼした。ある新人は「感染させてしまう可能性を考えると、握手するのも迷う。いままでのような選挙戦をする時代ではないのかもしれない」と頭を悩ませた。
新型コロナの対応に苦慮する候補者と違い、1カ月間続いた来島自粛要請の影響で、有権者は選挙ムードを感じることすら出来なかった。60代女性は「投票用紙が届くまで選挙があると知らなかった」。40代男性は「選挙ポスターの掲示板が設置されたのを見て気付いた」と話した。盛り上がりに欠けたまま告示を迎えたベテランの現職は「今回の選挙はどうなるかわからない。投票率の低下も心配している」と語った。
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同町選挙管理委員会は、選挙における感染症対策を町ホームページに掲載している。投票所では▽入口での検温▽手指用アルコール消毒液の設置▽投票管理者や立会人らのマスク・フェイスシールドの着用▽投票用紙記載台や鉛筆等の定期的な消毒―を行う。有権者にはマスクの着用や鉛筆の持参、周囲の人との距離を保つことなどを求めている。会場には扇風機を置いて換気を徹底するほか、投票日に有権者が集中することを避けるため期日前投票を呼び掛けている。