アルファ米のカレーライスを試食する参加者ら
大規模災害などの発生時に被災地で医療・福祉・行政機関などと協力し、避難所などでの栄養・食生活支援活動などを行うJDA―DAT(日本栄養士会災害支援チーム)のスタッフ養成講座が29日、奄美市名瀬の県立大島病院であった。奄美市や瀬戸内町、大和村の医療機関や行政職で働く管理栄養士11人が参加、地震や台風などの災害発生時の食生活面からの支援の在り方などを学んだ。
養成講座は県栄養士会などの主催で、奄美群島では初開催。参加者は、同日と30日、9月6日の計3日間のカリキュラムで、被災地での災害支援の在り方などを学び、奄美大島で初となるJDA―DATスタッフとしての登録を目指している。
県栄養士会によると、JDA―DATに登録されている管理栄養士は全国で2117人。うち県内では79人のスタッフが登録されている。
30日の養成講座では、県立大島病院救命救急センター長の髙間辰雄医師や大和村の大和診療所の小川信医師、奄美海上保安部の上村邦博・警備救難課長、大島地区消防組合の沖島健太・第一救急係長、県大島支庁総務企画課の中尾栄人主査らが、災害発生直後の行動やその後の避難所での対応など、災害支援に必要な考え方などについて講演。水やお湯で簡単に作れる「アルファ米」を使った非常食のカレーライスの試食なども体験、日頃から災害に備えた食料の備蓄の重要性なども学んだ。
髙間センター長は、DMAT(災害派遣医療チーム)として全国各地の被災地で支援活動などを行った経験などを紹介したうえで、南海トラフ地震などの大規模災害が発生した場合、「奄美などの離島まで支援が行き届かない可能性がある。島民自らの手で、被災者を支援する仕組みを、今のうちに作っておくことが大事」などと指摘した。
JMAT(日本医師会災害医療チーム)として、被災地の避難所の感染症対策などに当たった経験を持つ小川医師は「避難所の食生活はパンやごはん、カップラーメンなどが多く、栄養に偏りが生じることが多い」などと話し、避難生活が長期化した場合、避難所などでのJDA―DATによる栄養・食生活支援の重要性を指摘した。
講座を受講したファミリークリニックネリヤ(奄美市名瀬和光町)の管理栄養士・石川恵子さん(55)は「島内でどうやって食料を確保し提供するか、日頃から考えることの重要性を感じた。災害時には少しでも被災者を支援できるようにしたい」と話し、奄美中央病院(同市名瀬長浜町)の管理栄養士・信坂洋子さん(49)も「離島の災害リスクを実感できた。様々な組織と連携しながら管理栄養士として被災者を支援できる体制をつくっていけるようにしたい」と話した。
県のJDA―DATのリーダーも務める県大島支庁保健福祉環境部の管理栄養士・山下雅世さんは「奄美大島にJDA―DATスタッフが誕生することで、島内での災害支援体制が充実する。今後も活動を継続し、リーダーの育成につなげたい」と話した。