希少野生生物保護増殖検討会

希少種保護増殖事業計画の19年度の報告や、見直しが協議された検討会

事業の終了見据えた計画実施
交通事故増加傾向続く

 2020年度奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授)が1日、奄美市名瀬のAiAiひろば会議室であった。アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミの希少種3種の保護増殖事業の実施状況を報告。同事業10か年実施計画の改定とともに、24年度に終了することを見据えた課題や目標が共有された。

 通常年度末に開催される同検討会。奄美地域における絶滅危惧種が自然状態で安定的に存続できる状態を目標として毎年開催されている。今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため延期となり、島外の出席者はオンラインで参加した。

 同計画の19年度の見直しでは、アマミノクロウサギを現在の環境省レッドリスト絶滅危惧種IB類からⅡ類以下または掲載されない条件を満たすこと、他の2種はレッドリストに掲載されないことなどを目標に掲げた。

 同省の報告によると、アマミノクロウサギの生息状況は増加傾向にあるものの、19年度の交通事故件数は奄美22件(全体の27%)、徳之島は16件(同35%)と増加傾向が続く。また、イヌやネコなどの捕殺による死亡は奄美では1件(同11%)にとどまったが、徳之島は14件(同21%)と過去最多だった。同省は今後も継続した交通事故や外来種などの課題への対策を継続実施する意向を示した。交通事故防止のため、19年度は自治体の協力を得て交通事故多発地点などに移動式看板を13台設置したという。

 同計画の実施報告に対して検討委員らからは「希少野生生物が増えているという数だけでなく生息環境の変化なども詳しく報告を」「林業・建設業者などへの情報共有や連携を強化するべきでは」との声もあがった。

 また、大和村企画観光課から、交通事故で受傷する個体が増加傾向であることや、農作物の食害などの課題解決のため、同村に「アマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)」を設置する計画を示す発表もあった。

 石井座長は「事業の終了を見据えた計画の実施は全国的な前例になる」と評価し、「計画終了後のフォローアップも含めた協議が必要。関係機関と連携して進めていく」と述べた。