「不用果実」適切な処分を

収穫されずに放置されたグアバの果実。腐敗果がミカンコミバエを呼び込み発生源となる可能性から注意が必要だ

ミカンコミバエ 熟したグアバ放置、呼び込む可能性
群島全域チラシ配布で啓発へ

 果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの誘殺数は今年度、県内で相次いでおり、8月末現在で合計92匹に達し、既に昨年度の確認数(35匹)を大幅に上回っている。ミカンコミバエが特に好む「好適寄主植物」の一つにグアバ(バンジロウ)があり、奄美では庭木や家庭菜園などで植栽されている。果実の収穫期は9月~10月だが、品種によっては8月中・下旬から収穫できるものもある。こうした熟した果実が園内に放置されると、飛来したミカンコミバエを呼び込み発生源となる可能性もあることから、関係機関は不用果実の適切な処分を呼び掛けている。

 ミカンコミバエは、ミカンなどのかんきつ類だけでなく、トマト、ピーマンなどの果菜類、パパイア、マンゴー、バナナなどの果実に卵を産み、幼虫が加害するミバエ。「世界的な農業害虫」として知られている。

 トラップ調査で誘殺が確認されると行われるのが、幼虫やさなぎの有無を確認する寄主果実(寄主植物)調査。奄美で主に採取する果実は、▽グアバ、アセロラ、ミカン類、マンゴー、バナナ、パパイア等の果樹(熟果)▽オキナワスズメウリ、イヌビワ、ガジュマル、ゲッキツ等の野生寄主植物(熟果)▽モモタマナ(熟・未熟両方とも)、スモモ(着色始め以降)▽ピーマン、ナス、トマト等のナス科植物(熟果)。これからは好適寄主植物のグアバの収穫期に入るだけに、果実の適切な管理が求められる。奄美大島、加計呂麻島などで大量に再発生し、果物の島外への出荷が禁止される事態となった2015年には、9月中旬以降に誘殺数が急増。グアバの果実の中に幼虫が確認され発生を裏付けた。

 関係機関によると、通称「台湾バンジロウ」と呼ばれる品種は、一般的なものよりも1カ月ほど早い8月中・下旬には果実が収穫できる。同品種を植栽している園等で、熟した果実をそのまま放置しているのが見られることから、「腐敗した果実がミカンコミバエを呼び込むおそれある。収穫しない不用な果実なら、樹木の伐採を含め適切な処分を」と指摘する。地面などに落ちた果実の処理方法では、穴を掘って埋める方法のほか、通常の燃えるごみとして指定袋で回収できる。

 グアバ果実の適切処分の周知に向けて、「ミカンコミバエ侵入・まん延防止に向けたお願い 出荷や自家消費しないバンジロウ等は伐採を!」と記した啓発チラシの配布が奄美で計画されている。県経営技術課によると9月上旬にも群島内全域にわたって各世帯等に配布する予定で、周辺発生国からの飛来による誘殺が増加している中、果樹農業等に甚大に被害を与える発生を繰り返すことがないよう、住民の関心を高めていく。

 農林水産省植物防疫所によると、週まとめで更新しているミカンコミバエ誘殺状況の最新週(8月25~31日)では、九州・沖縄で今年度確認されている県のうち、同週も誘殺が確認されたのは鹿児島県(3匹)と沖縄県(1匹)のみだった。