屋根の片側が飛ばされる被害にあった住宅(奄美市名瀬港町、6日午時4ごろ撮影)
大型で非常に強い台風10号が北上した5日夜から6日にかけ、奄美群島12市町村では、約280カ所の避難所に最大約7000人が避難した。これまでに経験したことのないような暴風、高波、高潮、記録的な大雨のおそれがあるとして、気象庁が最大級の警戒を呼び掛けるなか、住民らは不安な一夜を過ごし、台風が通り過ぎるのをじっと待った。
避難者が最も多い奄美市では、6日午後3時までに1378世帯、2492人が避難した。地区ごとの内訳は名瀬707世帯・1337人、住用105世帯・171人、笠利566世帯・984人。龍郷町でも町内28か所の避難所に424世帯・744人が避難、家族らで思い思いに過ごした。
同市名瀬末広町のAiAiひろばでは、2階多目的ホールと3階集会場に15世帯、68人が避難した。避難者らは、世帯ごとにレジャーシートなどを床に敷き、おにぎりやカップラーメン、パンなど各自持ち寄った食料を食べるなどして過ごした。5日深夜には、静まり返った1階にあるテレビの前で、台風の進路や勢力などを伝えるニュース番組に見入る人や、窓ガラス越しに外の様子をうかがう姿もあった。
奄美大島が暴風域に入った6日午前8時ごろになると、雨風ともにしだいに強くなり、同市名瀬港町の名瀬漁協前の船溜まりでは、波が岸壁を超えて、打ち付けていた。市内を流れる新川の河口付近でも、満潮時刻が近づいた午前8時40分ごろ、高波が護岸を超え、押し寄せるなどしていいた。海沿いに立つ街路樹は大きく揺れ、同市名瀬小浜町の御殿浜公園前の湾岸道路では波しぶきが消波ブロックを超え、道路に達していた。
同市名瀬港町では、住宅のトタン屋根の一部が強風にあおられ飛ばされる被害もあった。被害にあった男性住民は「避難所に避難していたら、屋根が飛ばされたと連絡があった。けがしなかったのが幸い」と話した。
取材中は、外に出ると何かにつかまっていないとまっすぐ立つこともできないような強風が吹きつけ、運転する車もハンドルを取られそうになるほどの危険を感じた。
市中心部の商店街は、ほとんどの店舗が臨時休業、シャッターが閉まった状態で、出歩く人の姿はほとんどなかった。強風で飛ばされたとみられる看板が道路に転がっている場所もあった。
最も台風が接近した喜界町では、午前7時ごろから断続的に停電、同8時以降、停電が続いた。同町赤連で商店を経営する男性(60)は「昼前には相当風も強くなり不安だった。一日も早く元の生活ができるようなってほしい」と話した。