策定から5年経過で改訂

改訂された「奄美大島生物多様性地域戦略」

奄美大島5市町村・生物多様性地域戦略
国立公園指定や世界自然遺産進展踏まえ

 奄美大島5市町村はこのほど、生物多様性基本法に基づき2015年に策定した「奄美大島生物多様性地域戦略」について、奄美群島の国立公園指定や世界自然遺産登録プロセスの進展など、策定後の新たな動きを踏まえた取り組みなどを盛り込んだ改訂版を公表した。

 多様性地域戦略は、奄美大島の生物多様性の質的向上とその持続可能な利用を通じて、地域の活性化を目指す10年間の総合計画で、複数の自治体が共同で策定した国内初の地域戦略。世界自然遺産登録実現を視野に、県や各自治体が進める振興計画や奄振事業などのガイドラインにし「人と自然が共生する社会」の構築を目指す指針として、15年、専門委員会(座長=小野寺浩東京大学特任教授、15人)によってまとめられた。

 策定から5年経過時に中間評価と必要な見直しを行うとされていたことから、昨年度、見直しのための協議が行われ、①LCC(格安航空)の就航②奄美群島国立公園の指摘③世界自然遺産登録プロセスの進展④5市町村連携事業や民間事業者等に取り組みの進展―などを踏まえた改訂が行われた。

 LCC就航などによる入込客数の増加と奄美群島国立公園の指定に関しては、自然環境および生活環境劣化の抑制について言及。「環境文化を体験・体感する機会提供の促進」を追加、奄美群島エコツーリズム推進全体構想や地域通訳案内士育成などに取り組むよう求めている。また、経済効果による地域活性化を自然環境保全に還元する仕組みづくりと島民が主体的に地域活性化を担うための人材育成の取り組みなども盛り込んだ。

 世界自然遺産登録の進展では、「在来種や固有種の確認種数」と「生息・生育する代表的な固有種」を推薦書に合わせて修正。「奄美ノネコセンター」の運用開始や野良猫を捕獲し、避妊・去勢手術をしたあと元の場所に戻す「奄美TNR」の実施など、現状の戦略推進体制に即した修正を行った。

 5市町村の連携事業などについては、希少種保護パトロールや環境教育などの事業を踏まえ、世界自然遺産推進共同体の発足など民間との連携について言及している。

 また、改訂にあたり専門員会から提案のあった7項目の付帯意見と小野寺教授が改訂にあたって特に重視すべきとしたことを「おのでら私案」も提示された。