瀬戸内町教委・鼎氏が講演

近代遺跡(戦争遺跡)テーマの講演に聞き入る受講者27人
講演した鼎丈太郎氏

奄美市生涯学習講座 「遺跡生かし郷土教育を」
〝循環の輪〟作り上げて

奄美市生涯学習講座「世界自然遺産&戦時中の奄美を学ぶ」第4回講座が26日、名瀬公民館会議室で開かれ、瀬戸内町教育委員会社会教育課埋蔵文化財担当(学芸員)の鼎=かなえ=丈太郎氏が講演した。瀬戸内町の特徴の一つである近代遺跡(戦争遺跡)にスポットを当て、近代遺跡の調査状況と活用状況などを説明しながら「遺跡(文化財)を生かした郷土教育を。関係者を相互に生かし合う〝循環の輪〟を作り上げてほしい」などと指摘した。

27人が受講。鼎氏は「瀬戸内町に軍事施設が多く造られたのは、大島海峡があったことが背景にある。まず海軍が施設を造り、その後に陸軍施設が造られた」と述べ、戦争遺跡は「206カ所の軍事施設跡、648件の文献資料(2016年度)が確認されており、現在、調査を継続しつつ、整理を進めている」と説明した。

主な戦争遺跡は▽旧佐世保海軍軍需部の大島支庫(久慈水溜跡=水をためる施設)建設時期は明治期▽旧陸軍の西古見砲台跡(観測所)大正期▽旧陸軍の弾薬本庫後(手安)昭和初期=太平洋戦争前半▽旧海軍の第18震洋隊格納壕跡)昭和19~20年ごろ―に造られたと述べた。また、製作した「古仁屋戦争遺跡マップ」には、奄美大島要塞司令部跡(現在の古仁屋高校)などの位置や範囲が記されており、鼎氏は各戦争遺跡の特徴等を説明した。

大学、研究者、他自治体職員の調査来島についても話した。

郷土教育の一環として▽久慈水溜跡の発掘調査現場公開▽社会人向け講座開催(島案内人講座)▽子ども向け出前講座▽古仁屋高校生による戦時中の体験の聞き取り調査、発掘調査の体験―なども実施した。

鼎氏は近代遺跡の調査の必要性に関して①戦後75年を迎えたが、戦争遺跡調査や全体像は把握されていない②奄美群島の子どもたちは、日本復帰を学ぶことはあるが、戦争遺跡などの戦争の傷跡が残っていることを学ぶ機会、知る機会は少ないと思う③戦争を体験した世代が高齢者になり、伝承が困難になる中で、存在で物語る戦争遺跡が果たす役割が増えてきているのではないか―と述べた。

遺跡(文化財)を生かした郷土教育について「埋蔵文化財担当、子ども、高校生、社会人、集落民、観光ガイド、大学・研究者、観光客・外国人などが『相互に生かし合う〝循環の輪〟を作り上げる』ことが必要だ」と指摘した。