東京直行便から降り立った搭乗客(1日午後、奄美空港到着ゲート前)
同キャンペーンは7月下旬にスタートした。国内旅行費用の最大半額を補助する「トラベル」事業(1・35兆円)は当初、全国一斉を予定していたが都内感染数が増加傾向にあったため、「東京外し」での実施となった。与党内から見直し論が出、押される形で政府は9月に東京除外解除と10月1日実施を決定した。
この日、奄美大島に到着した東京直行便は、JALと格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションの2便。どちらも6~7割の搭乗率だったようだ。
キャンペーンで宿泊費を5千円ほど浮かせたという都内大学の医学生の男性(23)は初来島。「今回の旅行は7月ごろに計画。(東京在住者も)『GoTo』が使えるようになったので、とりあえず確認してみたら得する内容に変更できたのでよかった」と語った。
東京除外の解除決定と実施までの期間が短く、計画の変更不可や周知不足も露呈した。
友人らと来島した男性会社員(38)は「予約していたホテルはキャンペーン対象外だった。変更手続きも面倒なのでそのままにした。もう少し早く決めてくれたら…」。過去にも奄美を訪れているという女性会社員(26)は「(解除措置は)知らなかった。たぶんキャンペーンの有無に関係なく、これからも奄美ファンとして来島します(笑)」。
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国は今回の東京追加による観光需要の伸びを期待する半面、コロナ禍による経済再生と感染防止との両立の難しさから賛否の声が出ている。
東京除外の根拠となった都内のコロナ感染報告を見ると、直近の2週間で1日の平均は約180人。入込客を受け入れる事業所での感染対策は引き続き必須だ。
奄美市笠利町のリゾートホテル「コーラルパームス」の村山博和総支配人は「キャンペーンの初動による予約数は伸びており、関連した問い合わせも相次いでいる」と利用客の関心の高さを強調。その上で「宿泊客に理解を求めながら、接客など感染の拡大防止につとめたい」と話した。
奄美大島観光協会(会員約60業者)の越間得晴会長は「島内での感染対策は今後も講じる必要がある」とする一方で「観光業は半年以上、厳しい状況にある。東京との移動増に不安はあるが収益確保を考えていく必要もある」と厳しい情勢を吐露した。
同キャンペーンでは旅行先などで使える「地域共通クーポン」も開始。旅行代金の15%相当をクーポン券で発行、旅行代金本体への割引35%と組み合わせると補助率は最大50%に上るという。今後は外食産業の支援を目的とする「GoToイート」(2300億円)の実施を控えるが、こうした税金投入による事業のあり方が議論を呼んでいる。