加計呂麻沿岸海域で見つかったキンハブトラノオクモヒトデ(藤井特任助教提供)
刺激に対して緑色の光を放つキンハブトラノオクモヒトデ(藤井特任助教提供)
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室で研究する藤井琢磨特任助教
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室(奄美市)の藤井琢磨特任助教(33)が、加計呂麻島沿岸の水深15㍍の砂底で発見したクモヒトデの一種が、これまで国内での分布が確認されてない種類であることが分かった。今後、海外に収蔵されている他標本との比較によっては、新種と判断される可能性もあるという。藤井特任助教らは、体色の特徴などから「キンハブトラノオクモヒトデ」の和名を提唱。国内初記録として研究成果を、日本動物分類学会発行の国際的学術誌「Species Diversity(スピーシズ・ダイバーシティ)」電子版で28日、先行公開した。
研究成果を発表したのは、藤井特任助教と東京大学大学院理学系研究科付属三崎臨海実験所の岡西政典特任助教の2人。
藤井特任助教によると、昨年9月と今年2月、加計呂麻島南岸、請島水道に面する伊子茂湾の水深15㍍付近の夜間潜水調査で、2個体を採集。電子顕微鏡などで体内の形態などを調べた結果、国内での報告例はなく、海外でも2例ほどしか報告のない種類に類似することが明らかになったという。
水中に広げた長さ約25㌢の腕は、黄色と白、黒の体色をしていて、奄美で通称「キンハブ」と呼ばれるハブの体色に似ていることから「キンハブトラノオクモヒトデ」との和名を提唱した。
岡西特任助教によると、クモヒトデは、多数の骨片で構成された5本の腕を動かす無脊椎動物。浅い海から深海部まで様々な海洋環境に広く分布しているが、分類学的研究は十分でなく、どんな種類がどのような環境に分布しているのか分かっていない。奄美群島沿岸の研究もほとんど手つかずの状態という。
研究では、外部からの刺激によって肉眼で確認できる明るさの緑色の光を発することも分かった。クモヒトデ類の発光は、魚などの捕食から身を守る防御行動との推測もあるが、肉眼で確認できるほどの光を発する種類は一般的に少なく、藤井特任助教らは「近年注目が集まる海洋生物の発光研究の材料としても有望」としている。
発見の経緯について藤井特任助教は、「これまでに見たことのないクモヒトデだったので、珍しいと思ったが、国内で確認されていないことが分かり驚いている」と語り、「奄美にはまだまだ世の中に、知られていない種類の生き物が生息している可能性がある。研究成果を通し、奄美の魅力を発信することで、研究を支えてくれた地元の人たちを応援できたらうれしい」と語った。