龍郷町円集落 空き家事業本格化

森さん、佐藤さんが同行し、松永さんが入居を予定する空き家の状態を確認した(29日、円集落)

協力隊とNPO協力し相乗効果
移住希望者へつなぐ準備進む

 空き家活用事業に取り組む龍郷町内の円集落で、貸し出し可能な空き家3軒を定住希望者へつなげる準備が進んでいる。同町の地域おこし協力隊として活動する森まゆみさんは、NPO法人ねりやかなやレジデンス(現・あまみ空き屋ラボ)理事長の佐藤理江さんのアドバイスを受けながら、互いにアイデアを出し合う協力体制にある。3軒中1軒はすでに入居希望者がおり、土地の所有者との契約(同町空き家バンクへの加入)や建物改修へ向けた準備が本格化している。

 なお、同町企画観光課によると、10月現在同町の空き家バンクへ登録されている物件は1軒だという。
 地域おこし協力隊の森さんは5月に同集落へ着任。移住定住希望者の相談業務を受け持つなかで空き家の不足を実感したといい、「移住を後押ししたくても、紹介できる住居が少ないことにもどかしさを募らせた」と話す。それでも集落住民へ空き家探しについて声掛けをする前は、地域の行事に積極的に参加するなどして周囲とのコミュニケーションを重ねることを重視した。9月に念願の空き家紹介があったのは、日常会話の延長だったという。

 森さんは「息子が通う円小学校の児童9人が、来年度はさらに減り7人になってしまうことを危惧していた。集落の人も同じ気持ちだったのでは」と語った。

 佐藤さんは2012年から沖永良部島を拠点に奄美群島で移住定住促進事業に関わり、14年に独立。17年に同NPO法人を立ち上げた。19年10月には島内へ移住定住を考える人をターゲットとした宿泊施設「match guest house」を同集落内に設立し、NPO法人事務所も近隣に構える。これまで空き家の大家から物件を借り入居者に転貸する“サブリース契約”を3軒流通させた。事務所について、「借りた後に想定以上のシロアリやネズミの被害にあっていることを知った」と話す佐藤さんは、現在森さんらと協力して最低限の費用で改修作業を行う方法を模索している。

 事務所には改修作業の参考に①材料(材木)②塗料③日付が記載された数種類の板の仕上がりが比較できるサンプルや、手塗りの漆喰=しっくい=の壁、補修した天井などがある。

 佐藤さんは、空き家入居の際に重要なこととして▽奄美の家の造りや害獣・害虫被害を知る▽不動産登記書類を確認し、入居後のリスクを事前に把握する▽最低限の費用で改修作業を施すーことを挙げた。

 また、森さんは「行政では空き家所有者との橋渡しはできるものの、その後の相談や改修作業の費用を補助する制度の不十分さを感じる」と課題点を話し「一つずつ進めていきたい」と決意を示した。町は現在「移住ガイドセンター」を設立中だ。

 円集落内の空き家への入居準備を進めている京都出身の松永勇気さん(25)は「彼女と暮らす予定。以前から希望していた奄美大島での暮らしに期待が膨らむ。森さんや佐藤さんが契約や改修作業などの相談に乗ってくれて心強い」と話していた。