開催中のパネル展で著書を手に説明する、喜山荘一さん
【東京】奄美群島で死者や霊魂の化身と伝えられてきた刺青文様「ハジチ」を解読した本が、このほど出版された。それを記念したパネル展が、豊島区池袋のジュンク堂書店4階で開催され、訪れる人の足を止めている。ハジチと文様の由来となる蝶や植物、貝をビジュアルで表現したパネル展で、著者の喜山(きやま)荘一さんに話を聞いた。
2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」の愛加那が、手に施していたことで気付いた方も多いと思われるが、奄美群島には沖縄などと同様に主に女性の手に刺青(ハジチ)が彫られてきた。その刺青を初めて解読したのが、与論島生まれの喜山さんだ。小学校5年まで過ごした家は、サンゴ礁が見渡せる浜が間近で、「その風景が心に今も残っている」という。「貝塚・遺跡からハジチを読み取ることができるのに気付いたこと」が執筆のきっかけと語る著者は、「曽祖母の手に(ハジチが)あったはずだが、お年寄りの手としか見ていなかったのが残念」と少年時代を振り返る。
書籍『ハジチ 蝶人のメタモルフォーゼ』(南方新社=定価1300円+税)では、謎めいた文様の意味を、デザインと貝塚、習俗などから解読し、島ごとの違いなども説明されハジチとともにあった世界が開示されている。「ハジチの世界を拓くことができた。そのことに感謝して、祖母(おばあ)たちの労をねぎらいたい。とーとぅがなし」と結ばれている。喜山さんは、読者に向けて「かつての島人が自然と分かちがたくつながっていたことを思い出してほしい」と語っている。
文様の意味する蝶や植物の写真など(写真提供・仲程長治さん)で構成されたパネル展は、年内いっぱい開催予定だ。著書の問い合わせはsoichi.manyu@gmail.comまで。