「季節の食材取り入れた島の暮らしを大切に」

泉さんの話を熱心に聞き、メモをとる参加者たち

環境文化につながる
あまみならでは学舎 講師は泉和子さん

 奄美市名瀬の県立奄美図書館(日髙京美館長)は16日、同館4階研修室で、今年度最後のあまみならでは学舎を開いた。今回は島料理研究家の泉和子さんが講師となり、「島料理と環境文化」と題して講演。参加者は97人と大盛況だった。泉さんは「季節ごとの島の食材を暮らしの中に取り入れて料理をつくること、それが環境文化につながる。大切にしてほしい」と熱く語った。

 泉さんは奄美市(旧名瀬市)生まれ。1973年に帰島し、実家の旅館「浜の屋」を手伝い、料理を習った。奄美の情熱情報誌『ホライゾン』に奄美の食や昔話などに関するエッセーやルポを執筆、2008年から奄美新聞に料理レシピを連載するようになった。15年に著書『心を伝える奄美の伝統料理』を発行。18年度から奄美市生涯学習講座「島のお菓子」の講師を務めている。

 講演は「①時節に合った食材を採集、料理を作る島の暮らし」「②伝統料理として伝えられてきた島料理」「③多様な島料理」に分けて行われた。

 「①時節に合った食材を採集、料理を作る島の暮らし」では、アオサ、フツ(ニシヨモギ)、タケノコ、小豆、マコモ、ツワブキ(ツバシャ)、シマアザミ、シイの実などについて、それぞれの特徴や料理法を説明。「ヨモギの効能は多いので、ぜひ食べて」「マコモ茶はアンチエイジングによい」などのアドバイスもあった。

 「②伝統料理として伝えられてきた島料理」では、ウァンフィネヤセ、三献、ナンカンジョセ、フツムチ、シキ餅、ビラ汁、アクマキ、ミキ、カシャムチなどを行事の説明や背景と合わせて紹介。薩摩藩士で奄美大島に流された名越左源太の『南島雑話』や日記、同じく薩摩藩士で奄美大島に左遷された桂久武の日記などに出てくる料理で現在見られないものは、一つひとつ再現していったという。また、スーパーのチラシで行事に合わせて食材とレシピを提供しているものを見て、泉さんは「とてもよいと感じた」とも述べた。

 「③多様な島料理」では、おもてなしの料理、神と人とをつなぐ料理などを紹介。若い人がユタになるための儀式の手伝いをしたこともあるという。

 参加していた有村そのえさん(57)は「とても勉強になった。奄美の郷土料理のよさを再認識した。楽なほうへ楽なほうへと進んでいる今だからこそ、先人の知恵を取り入れて丁寧につくることの大切さを感じた」と話した。

 泉さんは「集落にはたくさんの食材、たくさんの文化がつまっており、島全体が博物館のよう。世界自然遺産にとっても大事なことなので、若い人たちに伝えて関心を持ってもらえるようにしたい」と語った。

 最後に、日髙館長より「2020年度あまみならでは学舎」閉会のあいさつがあった。