喜界島初の新人王・日本一に

勝利者インタビューに応じる久保さんと、激励するメッセージ(円内)

久保さんを囲んで同級生らが歓喜の祝勝会を開催

世界を目指す!プロボクサー・久保春平さん

 【東京】「やったぞ春平!」――。喜界島出身のプロボクサー・久保春平さん(23)が、21日に文京区の後楽園ホールで行われた「全日本新人王決勝戦」のスーパーフライ級で東軍代表として西軍代表にTKO勝ち。新人王に輝くとともに大会の技能賞も獲得した。喜界島初の快挙に、同級生らは大興奮。地元も歓喜に沸いたと伝えられた。

 闘いの音だけが響く無観客の後楽園ホール。久保さんは、異様な雰囲気のなか宮田博行会長の拍手に送られ、さっそうと登場。1回から東軍MVP選手にふさわしい動きで、無敗の相手(杉本太一選手)にジャブを的確に浴びせ主導権をつかんでいく。「いつも通りにやれば勝てる」の確信に満ちたフットワークと巧みなパンチが奏功。4回、2分29秒レフェリーストップによるTKO勝ち。遂に日本一の頂に立った。
 「コロナ禍、無観客とはいえ試合ができたことに感謝したい」と勝利者インタビューに答えた久保さんだったが「けがで(練習を)追い込めなかった」と反省も。思い通りの試合運びで圧勝に映った十数分間だが、実は不安も抱えていた。1月にふくらはぎの肉離れで十分なロードワークができなかった上に、計量直後、5年前から悩まされている「潰瘍性大腸炎」による下痢に襲われていたのだった。

 それでも負けるわけにはいかなかった。
この日、喜界島の荒木小学校体育館では、数十人がパブリックビューイングに参加。また、東京近郊にいる同級生らも、会場近くの店で久保さんの妹・愛莉さんのインスタグラムを通じスマホで観戦。のどをからした。さらに、島の小中高生や町役場からの応援メッセージも勇気づけてくれた。それらが「喜界島をボクシングで盛り上げたい」と願う彼の背中を押したのだった。

 熱戦から約4時間後、大会技能賞にも輝いたヒーローは、気心が知れた仲間と合流。応援メッセージが詰まった分厚いアルバムを見ながら、島への思いを笑顔で語り合っていた。東京喜界会青年部長の郡山尚也さんは「春平のおかげで、こうして集まれみんな最高です」と話していた。

 いよいよ日本ランカーだ。「自分はうまいボクサーじゃないけど、伸びしろはたくさん。楽しみにしてください」。喜界島から出現したシンデレラボーイは、世界を見据えている。