朝山市長に生徒指導ハンドブックを手渡す假屋園委員長(左)
2015年に奄美市の中学1年男子生徒(当時13歳)が、担任教諭の不適切な指導で自殺した問題で、同市教育委員会が設置する「再発防止対策検討委員会」(委員長=假屋園昭彦鹿児島大大学院教授)は22日、指導の在り方などをまとめた「生徒指導ハンドブック」を、朝山毅市長に提出、2019年5月の発足以降、約1年10か月に渡り、再発防止策の検討を進めてきた同委員会での審議終了を報告した。
假屋園委員長は「各学校において、二度とこのような事案が発生しないようハンドブックを有効に活用するようお願いしたい」などと述べ、朝山市長にハンドブックを手渡した。朝山市長は「内容を熟読し、学校現場と連携を図り、生徒の心に寄り添った生徒指導を実施していけるよう、しっかり教育行政に努めたい」などと述べた。報告には要田憲雄教育長も同席、「各学校において、ハンドブックを活用していきたい」と話した。
ハンドブックはA4版47ページ。はじめに男子生徒の自殺事案に触れたうえで、▽生徒指導態勢▽体罰・暴言▽教育相談▽教育委員会の対応の在り方―について、取り組むべき内容や課題解決に向けた手順、方法などを示している。
市教委は今年度中に市内の全小中学校に配布、今後生徒指導態勢の構築などに活用していく方針で、近く市ホームページにも公表する。
男子生徒の遺族らが求めていたハンドブックの実施状況をチェックする第三者機関の設置については、ハンドブック内に具体的な提示はなかったが、市教委は、「生徒指導審議委員会」(仮称)を市教委内部に設置する方針を示した。市教委学校教育課の末吉正承課長は「具体的な中身については今後、検討したい。遺族らの期待に必ず応えられる組織にしたい」などと述べた。
遺族側は市教委が今後設置する第三者機関の構成メンバーについて、中立公平性を求めたうえで「再発防止に詳しく本事案の経緯を知る者」として、第三者調査委のメンバーを加えることを求めている。
再発防止対策検討委がまとめた生徒指導ハンドブックについて、自殺した男子生徒の父親は22日、弁護士を通して「私どもの意見はわずかしか考慮されず、委員会終了ありきで公表に至ったことは残念」などとするコメントを発表した。
父親はハンドブックの問題点について、自殺事案の概要と課題について冒頭のわずか2㌻のみしか触れられていない点などから「事案の概要と課題の記載が不十分」と指摘。さらに、2018年12月にまとめられた第三者調査委員会の調査報告書で指摘された学校や市教委の対応の問題点などについて、具体的に触れられていないことなどから「生徒指導に関する理解が不十分」としている。
また、「市教委自身の対応や取り組み、責任については何ら明示されていない」などと、市教委の再発防止に対する姿勢を批判し、事案の調査報告をまとめた第三者調査委と連携した再発防止策の提言を求めている。
こうした父親の指摘に対し、假屋園委員長は「検討委の中で、遺族の意見もくみ取りながらハンドブックを作成した」と反論、市教委も「事案の概要と課題はハンドブックのはじめの部分で触れており、その課題から見えてきた生徒指導の在り方などについてまとめている」と説明した。