生涯学習講座・田中支庁長が講演

奄美の魅力と将来像などについて熱く語る田中支庁長(中央)の講演を熱心に聞く参加者たち

「50年先見据えた地域づくりを」
「環境文化」視点に奄美の魅力発信

 奄美市生涯学習講座「世界自然遺産&戦時中の奄美を学ぶ」第11回講座が27日、同市の名瀬公民館会議室(紬会館)であり、県大島支庁の田中完支庁長が、世界自然遺産登録を目指す奄美の魅力と将来像について、講演した。田中支庁長は、奄美で出会った人々や文化、自然などの魅力を紹介しながら、「50年先を見据え、持続可能な観光振興や地域づくりに取り組むことが大事」などと述べ、奄美群島国立公園の特徴である「環境文化」を視点に、奄美の魅力を発信する必要性などを指摘した。

 講座には受講生や一般市民ら約40人が参加。2017年から2年間の赴任に続き、昨年4月、支庁長として2回目の奄美勤務となった田中支庁長は、これまで大和村国直や龍郷町秋名、宇検村屋鈍など島内各地の集落を巡り、その地域の人たちと交流を深めてきた。

 講演では、こうした奄美大島の集落巡りや地域の伝統行事に参加した経験、奄美に関する様々な文献などを基に、奄美の魅力について説明。「空と森と海を包み込む光のステージ上に、島人が伝統文化を育んでいる」などと表現、希少生物が生息する豊かな自然環境とシマ唄など独自の伝統文化が形成されていることなどを、大きな魅力として指摘した。

 世界自然遺産登録を見据えた取り組みでは、奄美群島国立公園の特徴である「環境文化」について「自然保護と観光、地方創生を考えるための新しい視点」と説明した。

 本土や沖縄とも違う奄美の多様な歴史を知ることの重要性も指摘し、「黒糖地獄」と呼ばれる過酷なサトウキビの収奪にさらされた奄美で、自由売買を求める「勝手世(かってゆ)運動」を起こし、奄美の解放に貢献した丸田南里の偉業などを紹介。「島の人たちにもっと知ってもらいたい」などと語った。

 奄美の将来像については、新型コロナの影響などで観光客が減少、厳しい状況にある一方、今夏に予定されている世界自然遺産登録が追い風となることを期待。「今後、観光客や移住者も増えてくる。しっかりと地に足をつけ、持続可能な観光振興や地域づくりに取り組むことが大事」などと語りかけた。

 また、50年後には人口が半減することが予測されていることにも触れ「人口は減少しても、感性豊かで多才な移住者と島の人たちによる新しいコミュニティが形成されることで、活気ある個性的な奄美にすることができる」などと語り、世界自然遺産登録をチャンスと捉え、新たな視点から奄美の魅力を発見、発信する取り組みを求めた。