宮上病院長に感謝状

長年の徳之島署「警察検視医」功労で県警本部長感謝状を受けた宮上寛之氏(左)と末廣署長=8日、同署

検視で「人権の復帰・回復に」
県警、徳之島署で伝達たたえる

 【徳之島】県警察本部(鈴木敏夫本部長)は、徳之島署の警察嘱託医・警察検視医を務め、遺体の身元や犯罪性の有無の確認など警察業務に長年協力している医療法人南凕会・宮上病院(徳之島町亀津)の宮上寛之院長(74)に感謝状を贈呈。8日、同署の全体会の席上、末廣政春署長が伝達してたたえた。

 警察検視医は、変死や異常死など病院以外で死亡し、かかりつけ医が死亡診断書の作成が出来なかった事案などに対し、刑事訴訟法に基づき警察の要請で遺体を確認。身元確認や事件性の有無など判断への重要な手続きを担う。

 宮上氏(順天堂大学医学部卒)は、終戦後に開業した父の故・宮上淳(すなお)が地域医療の傍らで協力してきた同署検視医のバトンも1993(平成5)年に継いだ。この約28年間の同管内の検視事案は190件(人)を超えている。同署は全署員招集会合の伝達式で「徳之島の検案(検視)は宮上氏がいればこそ成り立っている」と付け加えた。

 総合診療の多忙な病院長の立場での同奉仕活動。宮上氏は「大変さは、道を問わず。どこどこで遺体が見つかったとか、山中や崖下だろうが時間、場所に関係なく現場に赴いていた。最近では、警察の協力でご遺体を同署か病院に搬送後、日中にするようになった」。技術面では「科学の進歩による画像診断Ai(死後画像診断)の発達で診断の客観性が高まった」とも。

 検視事案をふり返って「最も辛いのはやっぱり自殺。ご遺体の検視結果をご遺族に説明するが、その背景を考えるとつらい。世相を反映して死者の心の叫びが最終的にその形に。死者の人権が復帰・回復できるようにするのがせめてもの救い」。一方では高齢社会の進行に伴い「孤独死」的な事案も2~3割程度を占めるという。

 「県内に法医学を専攻した医師は少なく、学生はゼロの状態。(宮上病院内)勤務医の同法医学教室での研修、資格取得も目指している」。自ら鹿児島大医学部の地域医療臨床担当教授の肩書も持ち、後継者育成に積極的に取り組んでいる。

 県警本部からの感謝状に、「検視医の任務の重大さを再認識させられた」と話し、柔和な表情を引き締めた。