印南百合子支庁長インタビュー

「奄美のための世界自然遺産に」
多様性ある社会めざす

 2017年4月から2年間、県大島支庁瀬戸内事務所長として勤務、本庁総務部男女共同参画局長などを務め2年ぶりに奄美へ帰ってきた。自身、大島支庁勤務は3度目で、本庁勤務時も様々な機会を得て奄美群島の島々を積極的に訪問、奄美との関わりも深い。世界自然遺産登録を控えた奄美への思いや離島の抱える課題解決への意気込みなどを聞いた。

 ―久しぶりの奄美勤務の印象は。

 異動発表後、すぐに奄美の友人から「お帰りなさい」という連絡がたくさんあり、心強かった。島の人たちの温かな心遣いに感謝している。前回の瀬戸内事務所勤務を終えた時は、もう奄美で仕事をすることはないのかなと思っていたので、また奄美の人たちと一緒に仕事ができることをうれしく思っている。

 ―瀬戸内事務所長時代と比べ、気持ちの変化は。

 前回は瀬戸内、宇検が管内だったが、今回は奄美群島全体を管轄することになる。できるだけ、各離島に足を運び、地域の人たちと触れ合う機会をつくっていきたい。今週末は与論島に行く予定なので、楽しみにしている。

 ―世界自然遺産登録が見込まれるが、今後奄美に必要なものは。

 奄美には自然だけでなく文化や人とのつながりなど数多くの魅力ある資源がある。世界自然遺産登録を機に、国内外にそうした魅力を発信することで、経済的にも潤い、人々の暮らしも良くなっていく。自然環境や歴史文化などの地域資源の恩恵を、奄美の人たちが受けることができる仕組みづくりが大切。誰一人として取り残すことのない、持続性ある地域社会の実現を目指し、奄美の人たちのための世界自然遺産登録になるよう、行政として支援していきたい。

 ―女性初の支庁長としての思いは。

 女性であることはあまり意識していない。たまたま私が女性だっただけ。ただ、女性が働くことの大変さを実感してきた世代として、自身が組織のトップに就いたことで、今後、女性の働く風景が変わるきっかけになればと思っている。性別を意識しないで働ける多様性ある社会になることを願っている。

 ―奄美群島の振興に向けた大島支庁の役割は。

 中央集中の行政ではなく、どこで暮らしても公平な行政サービスを受けられるよう、地域の実情に沿った県政を担うのが支庁の役割。奄美の多様な環境に沿った、自然と人が共生した地域づくりに貢献できる組織が求められている。これまでお世話になった人たちへの恩返しも含め、奄美の人々の暮らしがさらに良くなるよう奄美の県行政トップとしての役割を果たしたい。(聞き手・赤井孝和)

メモ
(いんなん・ゆりこ)九州大学農学部卒。1984年入庁。大島支庁勤務は89年の厚生課(現福祉課)、17年の瀬戸内事務所に次いで3度目。奄美暮らしは通算6年目。「根っからの仕事人間」を自認するが、同事務所勤務時は、シーカヤックマラソンに出場するなどアウトドアも楽しんだ。定年まで残り1年、「島の人たちとの出会いを楽しみに仕事をしたい」と笑顔を見せる。59歳。