奄美大島全島民に遠隔教育システム

事業連携協定を締結した奄美大島5市町村の首長と、㈱Schooの森代表取締役社長CEO(上段中央)=18日、奄美市提供

5市町村と㈱Schoo(スクー)協定
教育機会の格差解消へ

 奄美大島の5市町村は18日、オンライン動画学習サービス「Schoo(スクー)」を運営する「㈱Schoo」(森健志郎代表取締役社長CEO)と「遠隔教育システムを活用した地方創生推進の包括的パートナーシップ協定」を結んだ。同社のサービスを利用して、離島の課題としてあげられる「学習・教育機会の格差」の解消を図り、島民の情報活用能力の向上や事業所の人材育成に取り組む方針。6月以降に全島民(約6万人)が無料でサービスを利用できるアカウント配布手続きが開始される予定だ。

 同社は、「世の中から卒業をなくす」をミッションに掲げ、個人や企業に向けてオンライン学習講座を動画配信している。実名登録会員は約61万人、観覧できる動画はビジネススキルからデザインなど多岐に渡り、6200講座ほど。地方創生推進にも力を入れており、全国15自治体と連携し、地方での人材育成・研修にサービスを提供しているという。

 奄美市は2017年度から「フリーランスが最も働きやすい島化計画」の一環として同社と提携。WebエンジニアをはじめとしたIT人材育成支援のため、奄美市に本籍がある人を対象に提携期間中無料でサービスを利用できるアカウントを配布した。その実績を踏まえ、20年度、同社から事業提携の提案があったという。高校生の進学や社会人の学び直しによる島外への人材流出を食い止める狙い。

 18日にビデオ会議システムを利用した調印式があり、森社長と5市町村の首長が出席。森社長は「弊社のサービスと知見を全て提供し、5市町村が目指すビジョンの実現に向けて支援したい。グローバル化や少子高齢化、新型コロナなど、変貌する時代に合わせた『日本の未来のあり方』を確立していければ」とあいさつ。

 5市町村の首長らは「地図上の離島であっても、生活のうえで離島であってはいけない。住民や島内事業所が、時間と場所にとらわれない研修の輪を広げることに期待する」(奄美市・朝山毅市長)、「遠隔教育を担う子どもたちにとっても必要な取り組み。デジタル化が進む時代、村職員の知見も深めていこうという矢先の協定で、村にとっても力になる」(大和村・伊集院幼村長)などとそれぞれ期待を込めた。

 奄美市の担当者によると、5市町村の光ブロードバンド回線の整備は、奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町(奄美大島側)は完了。今年度中に瀬戸内町の有人離島・加計呂麻の整備を終える予定で、請、与路の整備については未定だという。

 サービスのアカウント取得手続きは6月以降を予定。各自治体のホームページなどで案内を出すとしている。