外来種浮草が全駆除状態

ホテイアオイの異常繁殖状態(昨年8月、写真上)から一転、水位低下で全駆除状態となった徳之島ダム=4月末、天城町

工事で水位低下 〝偶然の賜物〟にニッコリ
徳之島ダム

 【徳之島】国営かんがい排水事業で天城町秋利神川水系に建設の「徳之島ダム」(有効貯水量730万㌧)。奄美群島最大級のその湖面にも昨年来、やっかいな侵略的外来種「ホテイアオイ」が侵入・繁殖して深刻化した。ところが、その後の災害復旧工事に伴うダム水位の低下(放水)によって〝偶然の賜物〟がもたらされ関係者を喜ばせている。

 多年生の浮遊植物の「ホテイアオイ」(ミズアオイ科、南アメリカ原産)は、国際自然保護連合(IUCN)が定めた「世界の侵略的外来種ワースト100」の1種。世界の熱帯・亜熱帯域に帰化し、日本では本州中部以南で野生化。豊栄養化した水域などでは急速に大繁殖して水面を緑一色に覆い尽くすやっかいもの。

 徳之島ダム(2017年完成)でも昨年夏までに、入り江部分の湖面を中心に侵入・繁殖が顕著となった。ダムを管理する受益者組織「徳之島用水土地改良区」事務局(天城町)は、ダム湖の見回り用ボート上からの人力による回収・除去作業ではもはや手に負えないと判断。拡大を続ける群落の回収機材の特注やリース対応も検討。いずれも多額の費用負担を伴うことから立ち往生状態に陥っていた。

 ところが、想定外の〝偶然の賜物〟を生む原因となったのは、3年前に台風被害を受けたダム下流「河道取り付け水路河床」の災害復旧工事。昨年12月から水位(満水時・水深約30㍍)をじょじょに下げ始め、現在はマイナス約6㍍を維持(19日夕)。つまり工事施工のためのダム貯水の水位低下によって、入り江部分が干上がり、密生していたホテイアオイが日干し状態となって次々と枯死。「ほぼ全駆除状態」の副次的効果を招いていた。

 同ダム管理事務所の新田和徳技師(37)によると、「多少は予想していたが、全駆除状態になるとは全くの想定外。島外からの専用機材のリースも数千万円規模を予想。今後は水位回復後による発生の動きも注視、早期駆除に努めていきたい」とにっこり。

 県内最大の「鶴田ダム」(薩摩郡さつま町、有効貯水量7750万㌧)ではホテイアオイを中心にボタンウキクサ(特定外来生物)との2種が異常繁殖。一時はダム上流約10㌔付近まで湖面の5~6割を被覆。台船と重機を使った初年度(19年度)費用だけで約1億5千万円を投入。ちなみに同管理事務所(国)の担当者は「鶴田ダムは洪水調節・発電用。徳之島ダムのように水位を下げての駆除は難しい」とも。