三太郎線周辺 10月にルール運用へ

住民説明会で、ナイトツアーの車両規制について意見交換する参加者

 

ナイトツアー車両規制実験結果住民説明会
実行力と周知が課題

 

 奄美大島三太郎線における夜間利用適正化連絡会議(事務局=環境省と県・市の担当課)は9日夜、4月~5月の大型連休にかけて市道奄美市住用町の三太郎線周辺で実施した2回目のナイトツアーの実証実験に関する住民説明会を、同町の住用公民館で開いた。ガイドや同町の区長ら約40人が参加。同連絡会議が実験結果を報告、参加者が3班に分かれて意見交換した。同連絡会議は今回の意見を踏まえ、8月に施行ルールを決定。2カ月の周知期間を経て10月にルールの運用が開始される見通し。

 環境省は夜間に希少動物を観察するナイトツアーの利用者の増加に伴い、希少動物の交通事故防止や車の騒音・ライトなどによる繁殖への影響の抑制、質の高い利用を促進するため、昨年11月に1回目の実証実験を実施。今年2月に実験結果や改善したルールなどを住民や関係者に報告した。

 2回目の実験は、3月に設置した同連絡会議として実施。実験期間は4月29日~5月9日までの11日間で、時間は午後7時~翌日午前6時までの11時間。今回は現地で人員配置は行わず、事前のウェブ予約と、現地の自動カメラで利用状況を把握した。また、通行方法を両方向から可能にした。

 結果報告によると、計151件の利用台数中、約3割の49件が未予約。三太郎線のほか、期間中通行自粛としていたスタル俣線の利用は5件あり、4件が未予約だった。通行後に報告を求めていた石原栄間線は38件の利用のうち、翌日に報告があったのは7件にとどまった。ルールに実行力と抑止力を持たせること、観光客に対する周知徹底などが必要との方向性を示した。

 利用が最も混み合ったのは、5月2日の午後8時~9時で、一晩の利用台数は25件。両方向通行としたことですれ違いが大幅に増加した。同連絡会議は、すれ違いを想定したルールの追加を予定する。

 利用者へのアンケート調査では、平均でガイドツアー利用が8・9匹、個人利用が4・6匹のアマミノクロウサギを観察した。希少種の観察種数、アマミノクロウサギの観察数ともに1回目の実験を上回る結果となった。満足度は全体的に、ガイド、利用者とも向上した一方で、ガイドからは一定数「不満」の意見もあがった。特に「安心・安全な通行」の結果は要検討とした。

 なお、ガイドアンケートの意見として予約システムの改善を求める声があった。利用者に向けては、予約システムに所要時間や観察ルールを盛り込んだ情報を記載することとした。

 結果報告を受けた参加者は、班ごとの話し合いを行った。ガイドや住民など、それぞれの立場から課題点を可視化。班ごとの発表では「規制区間が分かるように看板や標識を設置するべき」「区間入り口に人員を配置すべき」「ナイトツアーの通行は、ガイド付きのみ許可しては」「生活道路として利用する地元住民に特例措置を出せないか」「利用に関する勉強会を集落単位で行うべき」などの意見が挙がった。

 環境省の山根篤大国立公園保護管理企画官は「今回挙がった意見を整理し、連絡会議で議論を重ねてルールを策定したい」と述べ、世界自然遺産登録については「IUCNからの指摘を踏まえ、豊かな自然を守るために何が必要なのか、多くの人の意見を交えて柔軟に考えていければ」と語った。