シード大島、競り勝つ

【2回戦・鹿児島南―大島】2回裏大島二死一三塁、8番・竪山が先制の左越え二塁打を放つ=鴨池市民

夏高校野球第9日 12日喜界、枕崎と対戦

 【鹿児島】第103回全国高校野球選手権鹿児島大会第9日は11日、鹿児島市の平和リース、鴨池市民の両球場で2回戦4試合があった。
 奄美勢は第6シード大島が鹿児島南と対戦。3―2で競り勝ち3回戦に勝ち進んだ。
 第10日は12日、両球場で2回戦4試合がある。奄美勢は喜界が枕崎と対戦する。

 【評】大島は二回裏、二死から好機を作って一三塁とし、8番・竪山の左越え二塁打で2点を先取した。三回は二死から4番・瀧がライトスタンドにソロを放って追加点を挙げた。エース大野は立ち上がりから力強い投球で六回まで無失点。七回に2本の長打で2点を失い1点差に詰め寄られたが、八、九回は追加点を許さなかった。守備も無失策と安定していた。

夏高校野球ハイライト 
試合こそが最高の練習 大島 初戦と同じ1点差も内容は各段に向上

【2回戦・鹿児島南―大島】3回裏大島二死、4番・瀧(右)がライトスタンドにソロ本塁打を放ち3点目=鴨池市民

 

 大島は、初戦の鹿児島中央戦と同じく1点差の試合だったが、内容は格段に向上していた。「いろんなことが少しずつそろいつつある」(塗木哲哉監督)のを感じられた一戦だった。

 エース大野稼頭央は「本調子に近い投球ができた」という。鹿中央戦は試合中に左手中指の血豆が破れ、満足な投球ができなかった。2戦目までの間に手を尽くして治療し、投球に影響ないところまで回復した。細かい制球が時折定まらないところもあったが、球威やキレは本来の姿を取り戻した。9奪三振、被安打5、2失点と及第点の内容だった。

 エースが安定したことで守備も安定し、無失策で盛り上げた。打線は二、三回と二死から得点。三回に4番・瀧がソロ本塁打を放つなど、長打で得点できた。ただ四回以降は淡白な攻撃で、追加点が奪えなかったのは今後の課題点だ。

 コロナの影響で大会前の追い込みがほとんどできなかった大島にとっては、試合こそが最高の練習になっている。前日は雨のため五回で試合が打ち切りになったが「半分でも実戦を経験できたことが何よりありがたかった」(塗木監督)。

 試合後、敗れた鹿児島南の選手たちがやってきて児之原侑志主将から「自分たちの分まで頑張って甲子園に行ってください」と千羽鶴を託された。大島が大会で鹿児島にやってきた際は鹿南のグラウンドを練習で使わせてもらっている。昨年11月には鹿南が奄美に遠征にやってくるなど、両者は深い縁がある。エース大野は「鹿南の想いも背負って、自分たちが甲子園にいく」と決意を新たにしていた。(政純一郎)

夏高校野球熱球譜
全力の勝負を楽しむ 鹿児島南・田中胡斗龍投手(朝日中卒)

 二回裏二死一三塁のピンチで迎えた8番・竪山拓真は朝日中の同級生。鹿南と大島の対戦は今季3度目だが「昨年11月に遠征で来たときは僕がレギュラーじゃなかった。NHK旗は胡斗龍がケガで投げられなかったので、きょうの対戦を楽しみにしていた」と竪山は言う。

 前日、雨で流れた試合では投飛に打ち取られたので竪山は雪辱に燃えていた。1ボールからの2球目。田中が勝負球に選んだのは「得意のインハイの直球」。竪山は「塗木監督から内角を空けて待てと言われた。狙い通り内角球がきたので迷わず振り抜けた」。結果は左越えの2点適時二塁打で竪山に軍配が上がったが「自分の一番自信のあるボールを全力で投げて打たれた。悔いはない」と思えた。

 大島の選手とはほとんどが幼馴染。5月のNHK旗は右ひじのケガで投げられなかった分、この日の対戦を楽しみにしていた。大会前はひじの不安もあった中、2つ上の兄で鹿南の陸上部主将だった天智龍に悩みを相談。「最後の大会だから思い切って腕を振っていけ!」と励まされ吹っ切れた。

 四回3失点で降板し、右翼の守備についたが「仲間が必死につないで無失点で切り抜けて、もう一度マウンドに上がるチャンスを作ってくれた」ことがありがたかった。八回裏は三回に本塁打を打たれた4番・瀧を空振り三振で打ち取ってエースの意地を見せた。

 元々、高校で野球をするつもりはなかったが、中学の恩師に勧められて鹿南の体験入部に参加。雰囲気の良さに魅せられて、ここで野球をやってみる気になった。「素晴らしいチームメート、指導者に恵まれたことに感謝」と思えた3年間だった。

 試合終了のあいさつの直後、大島・大野に「投げ合ってくれてありがとう!」と声を掛けた。小学生の頃から一緒に遊んだ仲。先輩の意地を見せられなかったのは悔しかったが、力いっぱい投げ合えた充実感があった。

 「大高にはぜひ甲子園に行って欲しい。必ず応援に行きます」。(政純一郎)